多くの期待を背負って登場した『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』

これまでアメリカのエンタメ業界は、アメリカの世相の横を伴走する形で映画やドラマを作ってきて、“白いアメリカ”を信じている保守的なアメリカ人が求めるものに合わせてきました。進歩的な内容でアメリカ人の目を開かせようとする、オピニオンリーダー的な立場は、決して取ってこなかったのです。

特にテレビドラマはCMの広告料で成り立っているため、視聴者の反感を買う可能性があるものにはゴーサインを出しませんでした。
「リビングで見ている子供たちに、人種ミックスを奨励するようなことはするべきじゃない」という古い保守的なアメリカ人の偏見を受け入れ、長い間、人種ミックスのカップルがドラマに登場することはタブーとされていたのです。

そんな闇が晴れだしたのがここ数年。白人黒人のカップルがテレビ画面にどんどん登場するようになりました。LGBTQIA も含めて、ハリウッドの多様性への尊重は、口先だけではなく本物になりつつあります。

今の若い世代には、人種や肌の色を気にしない人が多くいます。ハリウッドのテレビ業界も、そういった一歩前を行く生き方をやっと反映するようになったようです。

『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』シリーズは、多くの期待を背負って登場した、時代の寵児といえる作品なのではないでしょうか。

文/中島由紀子

『BEEF/ビーフ 〜逆上〜』(2023)
業績不振に悩む工事業者と、満たされない心を抱える起業家。運転中にキレて、互いを知らないままにあおり合ったふたりに生じた確執は、やがてそれぞれのドス黒い衝動をあぶり出していく。

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