「絶対迷惑はかけないから携帯電話の番号を教えてほしい」
――幼少期はお父様とは一緒に暮らしていなかったんですね。
父と母は私が3歳の時に離婚しています。父がギャンブル資金にするために会社のお金を横領したことがバレて、解雇されたことが離婚の原因でした。それ以降、私は母方の実家で暮らすことになったのですが、当時は母子家庭が珍しく、母はコンプレックスに感じていたのでしょう。
母から父は亡くなったと聞かされていました。実際には離婚だったということを、高校生の時にこっそり戸籍謄本をとった際に知りました。父についてはほとんど何も知らず、記憶もないまま生きてきましたが、大人になってから40年ぶりに父に再会する機会があったんです。
――どのような経緯で再会したんですか。
父が生活保護の申請をしたことで、私たち家族の元に区役所から確認の連絡があったことがきっかけです。私は、父がどんな人か知りたい、という思いがあったので、母に内緒で会いに行きました。40年ぶりに会って「私のことわかりますか? 紀子です」って言ったらすごく嬉しそうにしていましたね。
――生活保護を申請したということでしたが、当時のお父様はどのような暮らしぶりだったのでしょう。
後でわかったことですが、母と離婚した後に父は事業で成功したのですが、外国人女性に熱を上げてしまい、巨額をつぎ込んでしまうんです。それで、会社もお金もなくなって、夜逃げした後に、生活保護を申請したと。
私が会いに行った時、父は、とある邸宅の庭にある物置小屋のような納屋を借りて暮らしていました。それで、「絶対迷惑はかけないから携帯電話の番号を教えてほしい」と言われて教えたのですが、そこから私の苦労が始まりました。