48歳、まだまだ10年後が全盛期

葛西は、デスペラードの告白をこう捉えていた。

「リングの上で死ねたらなんて言葉は俺っちは嘘としか思えない。何度も言いますけど、生きたくても死んでしまった方々が数多くいるんです。だから、俺たちは生きることを伝えなければならないんです。
試合後のデスペの言葉は、そんな俺っちの思いをわかってくれたなと思いました。試合では負けましたけど、戦前に約束していた彼の心を折ることは有言実行できたかなと思います。いい意味で彼の心を折れたと思います」

そして、こう続けた。

なぜ48歳のプロレスラー・葛西純の試合は人の心を熱くさせるのか? 「俺っちは10年後が全盛期と思って生きているから。48歳のおっさんが普通にやってても誰も見向きもしてくれない。だったら自分にできることは…」_3
48歳になった今、「今が一番、体の調子がいい」という

「デスペが日常生活で精神的に追い詰められる中で葛西純と戦うことが救いになったのがうれしい。逆に俺も生きてやろうと思いました」

葛西もデスペラードとの闘いを経てさらなる進化を実感していた。

「デスペに語りかけながら俺っちも涙が出てきました。それは、自分でも表現できない感情で…悲しいとかうれしいとかすべての感情が入り乱れていました。それは今までのプロレス人生では味わったことのない、こみ上げてくる感情でした。

今年でデビュー25周年を迎える。年齢は9月9日の誕生日で49歳になる。それでもデスペラード戦で初めて味わった感情がプロレス人生に火をつけた。デスペラード戦の試合後にこうぶち上げた。

「この涙があればもっと強くなれる。葛西純の全盛期は10年後。まだまだ強くなって生きて生きて生き抜いてまたデスペラードとやるよ。今日が終わりじゃねぇ。今日が始まりだ」

10年後に全盛期を迎えるという叫びは、自らへの叱咤だ。

「今年で49歳になるんですけど。こっちも痛い、あっちも痛い…体力的に衰えるからどうしよう?って思いながらプロレスはできないんです。年齢なんて関係ない。そう思わないとお客さんを満足させるパフォーマンスはできないんです。それは、気持ちがあれば乗り越えられるし、肉体的な衰えも阻止できると俺っちは思っていますよ。

なぜなら、実際に10年前の葛西純より今の葛西純の方がコンディションもいいし、強いんです。年齢を重ねると衰えるなんて人間が決めたこと。人間が決めたことは人間が覆すことができるんです。
固定観念に捉われないのが葛西純。葛西はただの人間じゃないと思っているんで。10年後に全盛期を迎えますよ」