#1 「死んでもいい覚悟なんていらねぇ」“デスマッチのカリスマ”葛西純が闘い続ける信念
#2 風俗通いでHIV感染も覚悟した葛西純が夢だったプロレスラーになった理由

「血を流すのはリングの上だけで十分」

「生きて帰ることがデスマッチ」の信念を抱く“デスマッチのカリスマ”葛西純。流血して背中に無数の傷を負いながらもリングから帰還することで、観客への「生きろ!」というメッセージを肉体で表現している。

命の賛歌を訴えているからこそ、2023年の今、葛西の中でどうしても伝えたいメッセージが生まれている。

なぜ48歳のプロレスラー・葛西純の試合は人の心を熱くさせるのか? 「俺っちは10年後が全盛期と思って生きているから。48歳のおっさんが普通にやってても誰も見向きもしてくれない。だったら自分にできることは…」_1
左手のバンテージに「Against War」、右手にはスペイン語で「Picaro」と書かれている
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「ロシアのウクライナ侵攻という、あまりにも理不尽で信じられない蛮行が現実になって…。俺っちは、この日本でテレビでしか現実を見ることしかできないけど、今、あんなあり得ないことが現実になって、生きたいのに亡くなっていく方々がいることを目の当たりにして…。
俺っちが何かを表現したからって、どうなるものでもないと思うけど、何かを伝えずにはいられないんです。だから『戦争なんかいらない』っていうメッセージを今、リングの上から伝えています」

昨年2月24日に勃発したロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻。戦争による両国での死者数は数十万人と推計されている。「生きたいのに死ななきゃいけない」命を目の当たりにした時、葛西は試合で身につける左拳に巻くバンテージに「戦争なんていらねぇんだ」の思いを込めて「Against War」とマジックで書いてリングに上がっている。メッセージに込めた思いをこう明かす。

「血を流すのはリングの上だけで十分なんです。そんなことは日常生活ではあってはならないんです。『Against War』にそんな俺の思いを込めています」

ただ、観客を沸かせればいいと思っていた若手時代。伊東竜二戦、デスマッチトーナメントを経て「生きて帰ることがデスマッチ」の信念が生まれた。リングから「命」の賛歌を訴えた葛西は、今、現実にこの地球で起きている理不尽な戦争へ自らのメッセージを届ける。