「人間って可能性の塊なんですよ」
葛西は、気持ちが肉体を超えると繰り返した。そんなことはあるのだろうか?と疑いたくなるが、葛西が抱える現実がその言葉に説得力を持たせる。現在、葛西は以下のケガを抱えている。
「頚椎椎間板ヘルニア」
「腰椎椎間板ヘルニア」
「左肩腱板損傷」
「左膝内側側副靭帯断裂」
「左膝前十字靭帯断裂」
「左膝半月板摘出」
「右膝前十字靭帯断裂」
「右膝内側側副靭帯断裂」
「右膝半月板損傷」
「右肘関節内遊離体」
「左足首靭帯損傷」
首、腰、両腕、両足…全身に重傷を負っている。にもかかわらずトレーニングは進化しているのだ。
「ダンベルベンチプレスは、10年前は左右で80キロだったんですけど、今は100キロ上げられます。肉体は確実に進化しているんです。それは、年齢で人間は衰えるっていう固定観念を覆してやろうっていう気持ちが上回っているからだと思っています。人間って可能性の塊なんですよ」
10年後もデスマッチをやり続ける。
「プロレスラーって大きくて強いのが大前提だと思います。だけど、自分は体も小さいし見た目もイケメンでもない。身体能力も高いわけじゃない。そんな48歳のおっさんが普通のプロレスをやっていても誰も見向きもしてくれない。だったら自分の魅力を最大限に出せるデスマッチで表現できるのが一番いいと思います」
デスマッチにかける信念、そして誇りは揺るがない。
「普通のプロレスができないとデスマッチはできないんです。プライドを持ってやっています。プロレスって試合に人生が出ると思うんです。リング上の試合だけじゃなくて、これまでの俺っちのすべての人生を含めてお客さんが『葛西の試合は面白い』、『葛西は凄い』と受け入れてくれて、今の地位を築けたのかなと思います」
静かにほほ笑むと、こうつぶやいた。
「自分の生き様を表現できるのはデスマッチしかない。そして、これだけ危険なことをやっても葛西純は生きて帰ってきますよ」
傷だらけの体が歴戦の戦いの証…プロレスラー葛西純の写真集(すべての画像を見るをクリック)
#1 「死んでもいい覚悟なんていらねぇ」“デスマッチのカリスマ”葛西純が闘い続ける信念
#2 風俗通いでHIV感染も覚悟した葛西純が夢だったプロレスラーになった理由
取材・文/中井浩一 撮影/下城英悟