――第1回でお話しいただいた『ジャングルの王者ターちゃん♡』の空気感=田口選手のように、マンガを読みながら「このマンガはあの選手っぽいな」と思うことはほかにもありますか?
デスペラード 当てはめて読むことは特になくて。たまたま田口にそれを感じたということではあるんですが、探せば必ずプロレスラーに当てはまるマンガキャラは出てきますよ。プロレスラーは人間ですけど、「キャラクター」でもありますからね。
――ご自分のことはどういうマンガキャラだと思いますか?
デスペラード 特に意識してなかったなあ。ただマンガを読んだりアニメや映画を観たりして、仕草を自分に落とし込む作業はたくさんしてきたので、いろんなものが混ざっているとは思います。
――そうだったんですね。デスペラード選手はどのマンガの空気があるだろうと考えてみたのですが、動きがエレガントなところは絶対に外せないなと……そうするとなかなか難しいと思っていたところです。
デスペラード おお……優雅に動くとかゆっくり大きく動くっていうのは、マンガだと(表現するのが)逆に難しいかもしれません。
――ご自分としても優雅さはレスラーとして意識されているところではありますか?
デスペラード 自分が求めた表現が、言葉にするとそういうものだったのかもしれないです。僕みたいに身長が低いやつが小さく速く動いても、観ている人には何をやっているかわかりにくいんですよ。なので、なるべく大きくわかりやすく、ゆっくり動くというのを心がけてはいます。
まあでも、基本的にリング上は殴る蹴るの場なので、そこに似つかわしくないものをぶっこんでやれ!という意識で、ああいう立ち居振る舞いをしていますね。試合前の礼もそうですし。
――先ほどマンガなどのエンタメを見て仕草をご自分に落とし込むとおっしゃっていましたが、エンタメをプロレスと結びつけて見ている部分もあるのでしょうか。
デスペラード 僕は目に映る物は全部リング上に持ってこられるものだと思っているんですけど、その中でもマンガ、アニメ、映画は、極上の素材ですよね。もちろんそのまま持ってくるつもりはないんですが、あまりにもたくさん見ていると自分の中に入っちゃうんですよ。
前に失敗したなと思ったことがあって……何かにカチンときて、「おまえらがそう思ってんだったらその通りなんだよ。おまえらの中ではな」って返したんですけど、後から「『少女ファイト』のセリフやんけ!」と気づいて。ナチュラルに出てきましたね(笑)。
――『少女ファイト』(日本橋ヨヲコ・講談社)の「お前がそう思うんならそうなんだろう/お前ん中ではな(「お前ん中」に傍点)」というセリフですね。それだけ血肉になっているということだと思います。
デスペラード 僕の舌が回るのは、もちろんずっとリング上のことを考えているからなんですけど、くわえてリング以外のインプットが多いことも関係していると思うんです。それが考え方の幅を広げたり、言葉の引き出しの多さにつながっているんじゃないかと。
たぶん、マンガをたくさん読んでいなかったら、僕はもっとつまらないレスラーで終わっていました。リング上で戦う技術云々は最低限必要だとして、レスラーがある程度注目を集められる位置に来るためには、そこに何か人と違うものを乗せる必要がある。僕の場合は、それがマンガとアニメが大好きなことで得た言葉だったんだと思います。
――発する言葉に、いつも説得力があります。他団体の選手を指名して試合がしたいと訴えるなどご自分の希望を言葉にして、それが実現する状況を作り出していらっしゃいますね。
デスペラード ありがたい状況ではあるんですが……モデルがいるんです。高橋ヒロムなんですよ。
――そうでしたか! デスペラード選手のライバルとして真っ先に浮かぶ選手ですね。
デスペラード あいつは、夢を口にし続けて、いろんなものを巻き込んでそれを実現してきた。以前の僕は、何も言わないでトップの位置に行くのがかっこいいと思っていたんですが……うだつがあがらないままだったんですよね。
そういう状況でああいう選手を目の当たりにしたら悔しいじゃないですか。だから今、僕がやってます。
――それはチャンピオンベルトを持つ者としても、ご自分がやらねばというお気持ちがあるのでしょうか。
デスペラード そうですね。でもそれ以上に、誰がベルトを持っていようが関係なく今のまんまじゃいけない、という気持ちが強いです。目新しい挑戦者が入ってこないと、試合の質自体は上がっていくと思うんです。手が合う相手同士で試合が組めるようになるので。
だけど、それを続けているとどこかで僕自身がその状況に飽きてしまう。だったらほかの団体からおもしろいやつを引っ張り込んで動かしたほうがいい。
『新ターちゃん』で言えば、全世界格闘王決定トーナメントが終わって、次のシリーズ(ルシュ王国編)に入って、アペデマスとかアグニとか違うキャラクターが出てくるところですよ。プロレスもそうやってちょっとずつステージが変わっていかないといけないんです。