税務署から目をつけらにくい居住地は?
また、居住地によっても調査されやすさがあるという。
「港区や渋谷区などは、高収入の納税者が多いため、相対的に目立ちにくい。各税務署ごとにそれぞれ所管する地域は決まっていますが、税務署にもマンパワーの問題がありますので、これらの地域を所轄する税務署の管内だと、調査されるリスクは他の税務署よりも小さいでしょう。
一方で、以前、私は千葉の田舎の税務署にいたことがあるのですが、田舎だと売り上げの少ない会社の方が多い。
だから、ある程度大きな申告額、とはいっても都内だったら税務調査に入られにくいレベルの申告額でも、優先的に調査されることがありました。
一方、渋谷税務署管内などは職員の数も多いですが、法人の数はもちろん高所得の納税者も多いので、相対的に税務署に目を付けられにくいということはあると思います。
ここまでYouTuberを例にして個別具体的な経費計上の可否や種別について説明しましたが、税務調査に入り、実際に課税する場合には、納税者に対して『あなたの申告は間違っていますよ』という明確な証拠を原則として税務署は提示しなければならないんです。
税務署側も『すべて経費だと認められない』とガチガチにやってしまうと納税者の反発が大きいためなかなか調査が終わらないですし、何より経費の基準はあいまいなので『あなたの申告は間違っていますよ』と断言することも難しい。こういうことを踏まえ、税務署が譲れない論点についてちゃんと税金を納めてくれるのであれば、建前としては難しい経費についても認めてあげる、といった落としどころを見ながら税務署は交渉することも多いです。
例えば自宅マンションを仕事場としているなら、経費として100%は無理でも30~50%なら大丈夫、というような落としどころです。
もちろん、明らかに認められない経費はしっかり指導します。ですが、ある程度キチンと申告している人に対して重箱の隅をつつくようなことをするよりも、“脱税”を行うような者を取り締まる方が、税務署側にとってははるかに優先度が高いのです。このため、経費をごまかしにならない範囲で多少積極的に申告しても、脱税などの不正を行っていなければ、税務調査で認めてもらえることも実際のところは多いです」
ここまでが税務署の経費に関する見解だ。では実際、売れっ子YouTuberは経費についてどのような意識を持っているのか。
ある大手YouTuber事務所の幹部は「所属クリエイターの確定申告は、お金で揉めることを避けるため、当社は関与しておりません」と回答している。
総フォロワー20万人を抱える20代のインフルエンサーの男性は、家賃額を100%経費として計上していたそう。税制的にそれは認められづらいことを伝えると、「そうなんですか⁉ まったく知らなかった」と驚きを隠さない。
また、投げ銭ビジネスで月に100万円の収入があるという20代女性からはこのような回答が。
「私は子どもがいるので育児手当の関係で税金まわりのことはしっかりやっていますが、ライバー友達は『よくわからないから確定申告をしていない』と話していました。税金って難しいし、私のまわりは適当な人も多いですからね」
国民の義務である納税。しかし、投げ銭で稼ぐインフルエンサーの中には確定申告の煩雑さに匙を投げて税金をちょろまかしている輩も少なくなさそうだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班