プロデュースした映画は73作
1975年に『ジョーズ』(1975)で華々しい成功を収めて以降、スピルバーグはプロデュース業にも取り組むようになる。“製作”や“製作総指揮”とクレジットの肩書はそのときによって異なり、作品のクリエイティブ面にどこまで深く関わったかもケースバイケース。もちろん自分自身が、製作・監督を兼任する場合もあるが、逆に製作費を集めるために名前を貸しただけの作品も含まれている。
最初のプロデュース作品『抱きしめたい』(1978)はこのケースで、残念ながら本作は興行的に成功しなかったが、これが監督デビューとなったロバート・ゼメキスとのパートナーシップは、後に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)シリーズで実を結ぶ。
ほかにも『グレムリン』(1984)『メン・イン・ブラック』(1997)『トランスフォーマー』(2007)などのシリーズ化された人気作や、クリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』(2006)やデイミアン・チャゼルの『ファースト・マン』(2018)といった鬼才の監督作を世に送り出している。
それらのほとんどは、アンブリンやドリームワークスといった、彼のプロダクションが製作に関わった作品だ。自身が映画を監督するのみならず、映画界全体の発展のために広く尽力する、まさに映画愛あふれるスピルバーグらしい仕事ぶりだ。
世界総興行収入は驚異の102億ドル!
2018年、『レディ・プレーヤー1』(2018)のヒットにより、スピルバーグが監督した作品の世界総興収は歴代の監督の中で初めて100億ドルを突破。その後『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)や『フェイブルマンズ』のヒットもあって、2023年1月の段階では102億ドルに達した。
日本円にして約1兆3500億円! 高額過ぎてピンとこない方も多いと思うが、中規模国家なら1年分の税収に相当する金額だ。もちろん、歴代の映画監督のなかではナンバーワン。
2位のジェームズ・キャメロンが『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(2022)の大ヒットで猛追してはいるが、それでも現時点では20億ドルほどの差がある。ヒットメーカーと呼ばれるのは、この数字からも明らかだろう。
世界興収記録を3回も更新
スピルバーグが最初に映画業界にあたえた衝撃は『ジョーズ』(1975)の驚異的なヒット。当時29歳の若いフィルムメーカーが、人食いザメの恐怖を描いた一歩間違えればB級になりかねないパニック・ドラマで世界興収記録を塗り替えるとは、誰も予想していなかった。
900万ドルで製作された同作は、4億7千万ドル以上の世界興収を上げて歴代トップに立つ。2年後、盟友ジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』(1977)が7億7千万ドルを計上して、その記録を塗り替えるが、スピルバーグも負けてはない。
『E.T.』(1982)は7億9千万ドルを稼ぎ出して首位を奪取。さらに、自身の監督作『ジュラシック・パーク』(1993)で11億ドルを叩き出して記録を更新。ここまで3度、世界興収記録を塗り替えることになった。
現時点で歴代最高の世界興収記録は『アバター』(2009)の29億ドルで、2位に『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019/アンソニー・ルッソ監督)の28億ドル弱がつけており、スピルバーグ作品は、数字の上では完全に追い抜かれてしまった。
しかし、貨幣価値は年を追うごとに高まっていくものであり、『ジョーズ』のころと『アバター』の時代では、そもそも映画館の入場料自体が大きく異なる。単純な数字の比較では測れないものもあるのだ。