ゴールデン・グローブ賞は消滅の危機に瀕した
1月10日(現地時間)、第80回ゴールデン・グローブ賞授賞式が行われた。会場はこれまで通りビヴァリーヒルトン・ホテルで、セキュリティを過ぎて、レッド・カーペットーー実際には今回は灰色の絨毯だったーーに足を踏み入れたときから、すでに感極まっていた。正直なところ、無事この日を迎えられるとは思っていなかったからだ。
ご存じの方もいるかもしれないが、昨年のゴールデン・グローブ賞はテレビ放送されなかった。ゴールデン・グローブ賞を主催するハリウッド外国人記者クラブに黒人会員がいないことがメディアで大々的に報じられ、それにともない、放送権を持つ米NBCが2022年の授賞式中継の放送中止を決めたためだ。
それが、2021年5月のことである。トム・クルーズも過去に受け取った3つのトロフィーを、抗議の意味をこめて返却。ハリウッド外国人記者協会は業界の腫れ物となり、誰もが距離を取ろうとしていたのだ。
その後、ハリウッド外国人記者クラブが行ったさまざまな改革について、ここではいちいち述べない。当事者(※)が書いたところで客観性に欠けるし、悪意を持った人ならいくらでもケチをつけることができるからだ。ただ、1年半ものあいだ、コロナ禍がもたらした陰鬱なムードとあいまって、ぼくはゴールデン・グローブ賞が消滅する心構えをしていた。
※小西氏は同クラブの会員
だからこそ、セレブたちでごった返すレッド・カーペットを目の当たりにして、涙がこみ上げてきた。ゴールデン・グローブ賞は、いまもエンタメ業界に必要とされていたのだ。
初司会を務めたジェロッド・カーマイケルは、冒頭のモノローグでハリウッド外国人記者クラブをめぐるスキャンダルについて言及。黒人だからこそ司会に起用されたと自虐的なジョークを披露した。