ファストフード店は営業再開したが…

闇夜に突如としてサイレンが鳴り響く。
一度始まると数分は続き、鳴り止んでもその不気味な余韻がしばらく頭から離れない。

「街では今も空襲警報を耳にします。外出禁止令は午後11時〜午前5時まで継続中で、ところどころに軍のバリケードは見られますね」

ウクライナの首都キーウの現状についてこう説明するのは、キーウ国立工科大学にある日本ウクライナセンターの職員、中村仁さん(54歳)だ。同センターは、日本の文化や伝統を通じ、両国の相互理解を促す目的で2003年に設立された。

ロシア軍がウクライナに全面侵攻してから間もなく4か月––––。国連の6月16日発表によると、民間人の死者は4452人で、国外への避難民は約750万人に上る。両軍による戦闘はもっぱら東部のドンバス地方に集中しており、3月末にロシア軍が撤退したキーウとその近郊は、徐々に日常を取り戻しつつある。

戦火のウクライナに留まる邦人男性-「この国を見捨てられない」思いとは_1
人通りが戻りつつあるキーウの街並み

「営業している飲食店はまだ少ないですが、ケンタッキーなどのファストフード店は再開し始めました。以前に比べて平時の雰囲気は感じられます」

外出する買い物客や車の数は日を追うごとに多くなり、その光景は戦争前の活気を思い起こさせる。一方で、ロシア軍によるとみられるキーウへのミサイル攻撃は散発的に続いており、6月5日早朝には、巡航ミサイル5発が撃ち込まれた。うち1発は砲撃されたが、残りは鉄道関連施設に着弾した。中村さんは、

「現場は私が住むアパートから10キロ以上離れています。当日は夕方まで知りませんでした。私自身は特に問題なく、元気ですよ」

と語り、相変わらずの落ち着いた様子だ。