夜に観たら電気を消せなくなる
最後は、オーストラリア発作品『レイク・マンゴー ~アリス・パーマーの最期の3日間~』を紹介する。『ツイン・ピークス』の親戚みたいな邦題だが、中身はそれとはまったく関係ない心霊ドキュメンタリー風ホラーだ。
ある日突然、女子学生のアリス・パーマーが失踪。家族と警察の懸命の捜索もむなしく、彼女は遺体となって発見された。それ以降、家族の住む家で不思議な現象が起こり始め……。
話そのものは王道のゴーストストーリー。それをドキュメント番組として描いていく。家族のインタビューや捜索シーン、手持ちビデオなど様々な角度から失踪事件が映される。事件後にたびたび姿を現すアリスの影が非常に不気味で、夜に観たら部屋の電気を消せなくなるほどの破壊力がある。
恐ろしいのはそれだけではない。アリスの死後、彼女を取り巻くとんでもなくドス黒い真相が明らかになっていく。死者も生者もダブルで恐怖を更新していく地獄みたいな内容だ。すべてが終わった後の虚無感は言葉では言い表せない。思わず、全身の力が抜けてしまった。とにかく怖くて物悲しい傑作だ。
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今回紹介した5本は、いずれも違った味わいの恐ろしさと魅力を持つ素晴らしい作品だ。一部入手が難しいものもあるが、頑張れば手に入らないこともないので、根気強く探してみてください。
ほかにもまだまだ面白い作品は埋もれている。また、今回はホラーだけ取り上げたが、コメディなどさまざまなジャンルでもモキュメンタリー作品は作られている。
虚構とわかったうえで、徹底された本物感を味わう……この楽しさは一言で言い表せないほど奥深く、一度クセになったら掘り下げが止まらない。現実に侵食してくる唯一無二のジャンルに、手を伸ばしてみてはいかがだろうか。
文/人間食べ食べカエル