国会での「ワニ動画」から始まった
選挙の追っかけ映像化計画
――芸人とラッパーという本業を持つお二人が、選挙を追いかけた映画「劇場版 センキョナンデス」を制作された経緯は?
ダースレイダー(以下D) キッカケとしては2020年の「検察庁法改正案」ですね。あの法案は国会も世論も巻き込んで、かなりシビアな議論が沸き起こりましたが、その真っ只中に……。
プチ鹿島(以下P) 香川出身の平井卓也さんが、国会の審議中にタブレットでワニの動画を見てたという。たしかに本読んでたり、通販サイト見てた人もいましたけど、「え! ワニの映像!?」っていう(笑)。
D それが衝撃的すぎて、僕ら二人がやってる時事YouTube番組「ヒルカラナンデス」でもそれを取り上げて、かなり“イジってた”んですよね(笑)。
P しかも、その後に平井さんは、菅政権(当時)の肝いり政策であるデジタル改革担当大臣に就任したんですよ。
D 「さすがタブレットが使えるだけあるな~!」と(笑)。同じ時期に「劇場版 センキョナンデス」のプロデューサーでもある大島新さんが、政治家の小川淳也さんを追いかけたドキュメント『なぜ君は総理大臣になれないのか』を制作されて、そこで小川さんと同じ選挙区の平井さんは、香川で6割のシェアを誇る四国新聞のオーナー一族出身で、地元財界にも太いパイプを持ってるという、かなりすごいキャラだということを知って。
――その直前には東京オリンピック/パラリンピックのアプリ開発に関して、「NECを徹底的に干す」「脅しておいて」と平井氏が発言したという報道もありました。
D だから、僕らとしては強大な権力者なんだろうなと。
P それで「そんな人の出る選挙戦は、密航(注:プロレスファンが地方に観戦遠征にいくこと)するしかない!」と興奮して、選挙の終盤にダースさんと一緒に香川入りした模様を撮影し始めたのが、この映画のキッカケですね。だから完全に平井さんありきですよ。僕はラコステのTシャツも新調してますから(笑)。
D 現地でもなかなか会えなかったのも、かなりラスボス感がありましたね。
P 対立候補の小川さんにはすぐ会えたのに(笑)。だから映像でもわかりますけど、遠くから平井陣営の街宣で「デジタル」って言葉が聞こえた瞬間の二人の興奮!
D ライブで「あ、聴きたかった曲のサビが!」っていう感じで(笑)。
P もう興奮が抑えられなくて、小走りになってますからね(笑)。本当に夏祭りの盆踊りで、太鼓の音が聞こえて浮足立っちゃう子供と一緒。
――実際に平井氏がどんな選挙戦をしたのか、そしてそれを取り巻くメディアの状況もコミカルに撮ってはいますが、実は非常にホラーな側面もあり、その立体構造も興味深く感じました。
P そういう部分は「ヒルカラナンデス」でも話していたので、視聴者はそこに興味を持ってくれていた人もいると思うし、それに対する答え合わせという部分でも、この映像や取材結果はまとめないといけいないという、ある種の使命感もありましたね。