選挙は「自分との対話ができる機会」
――お二人は芸人とラッパーという「話芸」を生業にされていますが、なぜ政治を話題にしているのでしょうか?
プチ鹿島(以下P) コロナ禍によって、WEBやSNSを見る時間も長くなったと思うし、そこで政治的な議論が起こると、そこに真面目に向き合いがちだったと思うんですね。それは本当に良いことだと思うんですけど、一方で「僕らしかできないアプローチの仕方」もあるなと思って。
同じ芸人でも、為政者をわかりやすく攻撃するようなSNSの使い方もあると思うし、それを否定はしないけど、僕らはもっと面白さや可笑しみの部分を「イジり」たいなと。
ダースレイダー(以下D) 政局や政治家の名前を知らなくても、まず面白く聴けるというのは、僕ら二人の「話芸」として心がけてる部分ですしね。
P 僕らはジャーナリストではなくて、あくまでもやっぱり「芸人とラッパー」。だからこそ、その二人が話すから生まれる掛け合いの面白さを出したいし、政治や批評の前に、まず単純に「話芸として」視聴者を楽しませたい。
D それは菅(義偉)さんが官房長官から総理大臣になるタイミングで、強く感じましたよね。
P 官房長官時代に、「プレジデント」で菅さんが人生相談の記事を始めたんですよ。菅さんの人生相談好きは一部の人には知られてたけど、いよいよそれを大っぴらにするときがきた!と。
D もう、僕らとしては「あのグラビアアイドルが遂に脱いだ!」的な興奮でしたよ(笑)。
P しかも人生相談なのに、ほとんど自分のことしか話してなくて、これはかなり自意識の部分も出しているし、いわばグラドルの女優宣言だなと(笑)。
D そうしたら実際に総裁選に立候補して、総裁になったんですよね。
P そういう周辺情報からも、政治家の意識の動きも感じることができるし、良い悪い、貶す褒める以外の面白がり方やイジり方を、僕らはしたいんです。
――映画の中でもお二人は事柄に対する「賛否」は明言されませんね。ただし「チェック」「ウォッチ」はしている。
D この映画でやっているような、「候補者をチェックする」という事が当たり前になって、有権者がこういうスタンスで選挙や政治を見るようになると、世の中がマシになると思うんですよね。少なくとも自分が気になることを聞く、確認するという意識を持つだけでも、ずいぶん変わると思う。
P どうしても「投票」というと、候補者のすべての政策を把握しないといけない、そうじゃないと投票や政治参加できないみたいな風潮があるし。
D 「ちゃんと勉強してから投票しろ!」みたいにマウントを取ってくる人もいますよね。
P それが原因で投票率が低くなってる部分もあると思うけど、そこまでシリアスに考えなくてもいいはずなんですよ。例えば何かを質問したときの返しに中身がなかったり、演説でやたらと難しい言葉を使ってたりしたら、「そんな人に自分の代理は任せられないな」でいいと思う。
D 同じように「民主主義を守れ!」「選挙にいくべきだ!」と強い言葉で押されると、引いちゃう人もいると思う。もっと敷居が低くてもいいはずなんですよ。近所のお祭りに行く感覚で。
P しかも、投票日に投票すれば、その結果はその日にわかるんですから、展開も早い(笑)。
D そしてその投票が正しかったのかを、それからのその人の行動や、世の中を見ることで答え合わせができる。その意味でも、選挙は「自分との対話ができる機会」だとも思うんですよね。