北村 『すずめの戸締まり』は、序盤でダイジンという猫が草太を椅子に変えてしまうじゃないですか。それで草太がダイジンを追いかけるシーンでめちゃくちゃアップテンポなジャズが流れますよね。あれを聴いて「新海誠はこれまでとちがうことやろうとしてるんだ」と思いました。
これまでの新海誠って、いわゆるMV的な演出というか、音に映像を心地よくハメていく快楽が物語を引っ張っていたと思うんですよね。
だけど、今回は序盤にあのジャズが入ったことで、それが崩されるんですよ。個人的には50年代の日活映画を見たときの感じを思い出して(笑)。とにかく今までとちがうことをやるんだっていうメッセージを受け取りました。
北村 最後に流れるRADWIMPSの曲とかも、どちらかというとBGM的な使われ方をしていて、後ろから包み込むような感じなんですよ。それは今までの新海作品にはなかった特徴ですよね。
土居 そうそう。しかも、音楽と描かれるシーンがバチッとハマってるってわけではないんですよね。ジャズが流れるシーンとかもちょっと違和感ありますし。いい意味で洗練されていない使い方というか。ユルさやユーモア感なども包括する感じ。
慣れ親しんだ音楽も今までとちがって聴こえてくるし、映像体験にある種の生々しさを与えていると思います。
3作品連続100億円突破! 映画『すずめの戸締まり』にみる新海誠の現在地と、ポスト・ジブリたり得る可能性
『君の名は。』『天気の子』に続き、3作品連続で興行収入100億円を突破した映画『すずめの戸締まり』。ポスト・ジブリとも目される新海誠の想像力は、なぜこんなにも多くのひとを惹きつけるのか。その魅力について、映像研究者の二人が徹底的に語る。※本記事は新海誠作品のネタバレ要素を含んでいます。未視聴の方はお気をつけください。
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ポスト・ジブリとしての新海誠
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