続いては「週に一度しか洗濯しない嫁が腹立たしくて病気になりそう」という61歳の主婦からの相談です。答えるのは、昭和を代表する大女優のひとりでありエッセイストとしても活躍した高峰秀子さん。2010年に86歳で世を去りました。

相談者は「スープの冷めない」距離に、長男夫婦と小学高学年の孫二人が住んでいます。「私ども夫婦とは、仲良く暮らしております」と言いつつ、洗濯の回数の少なさを厳しく非難せずにいられません。注意をしてもあらためようとしないと嘆く相談者に、高峰さんは穏やかな口調を保ちつつ、暗に「大きなお世話だ」と伝えます。

〈「ないものねだり」という人間のわがままは、どんなとき発生するのか? それは、あまりに平和で幸せな生活になれすぎた場合に起きるのだと、私は思っています。あなたの悩みとやらもいささかそれに近いにおいがするのですが……。ご長男の家と「仲良く暮らしております」という口の下からお嫁さんへの不満が頭をもたげてくるのが、その証拠ですね。(中略)つまりあなたにはカンケイないのですから、そんなことで悩んで病気になってはつまらないではありませんか。あなたの流儀はあなたの家でのみ通用させることですね〉
※初出:青木雨彦・高峰秀子著『雨彦・秀子のさわやか人生案内――悩むだけでは生きられない』(三笠書房、1987年刊)。引用:高峰秀子著『高峰秀子の人生相談』(河出書房新社、2015年刊)

「洗濯をしようとしまいと家庭が円満ならばけっこうなこと」とも。
相談者の夫は「あちらの家庭のことはほっておけ」と言っているそうで、相談者ひとりが息子一家の洗濯のことばかり考えて嫁への不満をふくらませています。
高峰さんのおっしゃりたいことを勝手にひと言にまとめると、「よっぽどヒマなんですね」というところでしょうか。
人は、気に入らない相手の「批判できそうなポイント」を見つけると、そこをあの手この手でクローズアップして、「嫌い」という感情を増幅したがる習性を持っているようです。

家族だから遠慮は無用は間違い、あなたの流儀はあなたの家で…「ダメな嫁」を嘆く姑を出久根達郎、高峰秀子、大森一樹が叱責_2