「とりあえずプロレスを観に来い」と猪木
難病と果敢に闘い続けて、2022年10月1日に世を去ったアントニオ猪木さん。プロレスラーとしてだけでなく、政治家としても多くの伝説を残しました。人生相談でも、迷える相談者に愛のビンタを送っています。
大学を卒業して一流企業に就職したものの「会社に行きたくなくて悩んでいます」という25歳の男性。「会社では友達もできず仕事もやる気が起こりません」と嘆いています。
猪木さんは「いわゆる五月病ってヤツか。難しい問題だな」とひと呼吸置いた上で、こうアドバイス。
〈そうだな、とりあえずプロレスを観に来ることだな。会場で「バカヤローッ」でも「猪木がんばれーー」でもいいんだけど大声を出してみろよ。(中略)それこそ、河原にでも行ってメチャクチャでっかい声を出してみるとさ、スカーッとして、今やっていることの価値観みたいなものが見えてくるかもしれないよね。もし、それで本当に価値観がなければしょうがない。終わりだな。会社員以外の別の選択を考える。それもまた生き方だと思うね〉
※初出:雑誌「週刊プレイボーイ」(集英社)の連載「風車の如く」(2001年43号~2002年49号)。引用:アントニオ猪木著『アントニオ猪木の人生相談 風車の如く』(集英社、2003年刊)
相談者に限らず、この回答を読んで「ふざけている」と感じた人は、疲れすぎて心の余裕をなくしているのかも。もちろん猪木さんは大真面目だし、ウジウジした悩みを吹き飛ばすには、うつむいて考え込んでいるより、背中を伸ばして大きな声を出したほうが、はるかに有効でしょう。
猪木さんは「会話している声がどんどん小さくなっていくとエネルギー自体も小さくなっちゃうんですよ」とも。猪木さんが常々おっしゃっていた「元気を出せば何でもできる!」という言葉には、「大きなエネルギーがあればどんな悩みも吹き飛ぶ」という意味もありそうです。