岸田総理と財務省の蜜月
では、岸田総理が言いなりになる財務省とはどのような機関なのか。端的に言って、隙あらば増税をしようと画策する機関であり、また、何らかの政策の結果として税収が増えたことは評価されず、増税を実現出来たことが評価される機関である。
日本の経済状況がどうあろうと、国民生活がどうなろうと、多くの事業者が苦しい状況にあろうと、そうしたことにはお構いなしに増税に突き進む、そんな機関である。そんな機関出身者が今や岸田官邸を仕切っている。安倍内閣は経産省内閣とも呼ばれたが、今や岸田内閣は財務省内閣である。
岸田政権はその迷走ぶりや、何も決めない姿から支持率は低迷し、自民党内では既に「岸田降ろし」が始まったとも言われている。保身のために財務省の言いなりになってくれる岸田総理はいつまでその地位にい続けられるのかわからなくなってきた。
だからこそ岸田氏が総理の座にいるうちにできる増税はやってしまおう、そう財務省が考えて拙速に動き、岸田総理は言われるがままに動いた、ということのようである。端から見ると、検討しかしてこなかった決められない男であった岸田総理が、突如決める総理になったかのようであるが、背景にはこうしたことがあったのだ。
そもそも今回の防衛増税の方向性の決定の更に背景には、アメリカから大量の武器を買うことでバイデン政権の覚えがめでたくなり、保身につながるという目算もあったようだ。
財務省による「岸田総理のうちに増税」作戦は防衛費増額にとどまらず、増税できる大義名分があればどんどん実行される。その絶好の対象が子ども関連予算倍増である。これではまさに増税のための増税なのだが、増税はいきなり、一気に実施するのではなく、ジワジワと進められる。
今回の防衛費増額では法人税、所得税、たばこ税が増税の対象として上がっているが、一緒に歳出改革、つまりは様々な予算を「無駄」のレッテルを貼って削減するということも行われる。「そうだ、行政の無駄を無くせば増税は必要なくなる」と、一般国民にわかりやすく、受け入れられやすそうな考え方だが、政府の財政支出の削減は経済の縮小を意味する。GDPの計算式に政府の支出が入っていることを思い出せば理解できるだろう。
とはいえ「無駄」の削減にも限度が出てくる。「無駄」な予算の削減が難しいとなれば、「予算の削減がこれ以上できないから仕方がない」、「必要な政策の財源確保のためには避けられない」として、次なる増税が検討の俎上に乗っかってくる。それこそが消費税増税である。
しかもこのシナリオを財務省が既に考えており、それに沿ってことを進めている可能性も否定できないこのだが、もしこれらの増税が実施されれば、日本は没落の道を進むことになる(財務省はそんなことはお構いなし)。
そもそも国は税収を前提にして支出をしているわけではなく、また国債を借金と位置付けて60年で償還(返済)しなければならないとしているのは日本だけである(こうした点については別稿で改めて解説したい)。
財務省の言いなりになって、保身のためならなりふり構わぬ岸田総理の暴走を早々に止めなければならない。その最大の山場は1月23日から始まる通常国会である。この国会には、防衛増税を既成事実化するための「財源確保法案(仮称)」が提出される予定である。
この法案を国会に提出させないか、少なくとも審議入りさせてはならない。
文/室伏謙一 写真/小川裕夫 gettyimages