高市氏の“ひとり立ち”を望んでいた安倍元首相
増税への反発と支持、保守への迎合とリベラルへの接近、安倍政治の継承と決別――。
防衛費増額の財源について、岸田政権が増税の方針を掲げたことで、安倍晋三元首相の寵愛を受けてきた2人の政治家の対照的な立ち位置が浮きぼりになった。その2人とは、高市早苗経済安全保障相と、稲田朋美元防衛相である。
「防衛費の安定財源を確保するため、岸田文雄首相が2027年度に向けて約1兆円の増税を段階的に行う方針を打ちだすと、高市氏はツイッターに〈賃上げマインドを冷やす発言を、このタイミングで発信された総理の真意が理解出来ません〉と投稿して公然と批判した。
一方、稲田氏は記者たちの囲み取材に応じるかたちで『増税を避けるべきではない。安定しない財源は無責任だ』と話し、岸田氏の方針に賛意を示しました」(全国紙政治部記者)
共に保守政治家を自認し、首相への意欲も隠さない2人。高市氏は2011年まで、稲田氏は初当選から現在まで清和会(現在の安倍派)に所属し、安倍氏に引きたてられたことで政界における足場を築いたことも共通する。
「総理総裁として安倍氏が率いる政権で、高市氏は沖縄・北方担当相や総務相を歴任し、自民党においても四役の1つである政調会長に女性で初めて就きました。一方の稲田氏も、安倍氏によって行政改革担当相や防衛相に抜擢されたほか、高市氏から引き継ぐかたちで政調会長も経験しています」(同前)
政界において華やかな経歴を誇る2人だが、最近の政局で存在感が際立っていたのは高市氏だった。2021年9月の自民党総裁選に出馬すると、100票あまりの国会議員票を獲得。
当初、本命視されていた河野太郎衆院議員の国会議員票を大きく上回ったことから、党内外で驚きをもって受けとめられた。
「総裁選で、高市さんを全面支援したのが安倍さんでした。安倍さんは本気で『高市を総理にする』と言い、その迫力に周囲も圧倒された。高市さんは、パーティー券の売上などを派閥に納める慣行を嫌って、清和会を飛び出したと言われていますが、そのことで清和会のボスである森喜朗さんとは距離があった。
安倍さんはその森さんも説得して、清和会をあげて高市さんを支える態勢を整えたのです。その反面、安倍さんの存在なしで、高市さんが総理総裁を射止めることもあり得ない」(清和会関係者)
総裁選後、高市氏の〝ひとり立ち〟を促すため、安倍氏は高市氏に1つの指示を出したという。