『地球の歩き方』で一番奇妙なガイドブック
由良さんは、本書が生まれたきっかけをこう話す。
「コロナ禍で、『地球の歩き方』の海外取材ができなくなってしまって、海外ガイドブックが作れなくなったんです。それで、新しい取り組みを編集部で模索しはじめました。私はマンガが好きなので、マンガをテーマに1冊つくれないかと思って。
『ジョジョ』は作品の中に世界各地の実在するスポットが登場しますし、2022年に35周年を迎えるということもあって、記念の1冊をつくりたいと思ったのがきっかけです。それで、集英社さんに企画をご提案しました」
由良さんは、主にヨーロッパを担当しており、『地球の歩き方』の女子向け版である『aruco』のフランス版では『ベルサイユのばら』、イタリア版では『テルマエ・ロマエ』を用いて歴史や文化を紹介するなど、マンガとリンクした本づくりも行ってきた。
ただ、マンガでまるまる1冊をつくるのは『地球の歩き方』としては初めての挑戦だ。どんなことを意識したのだろうか。
「コロナ禍で世の中が沈んだ空気感になっていて、旅に出られない時期でもあったので、意識したのは、読んだ人に明るい気持ちになってもらいたい、旅に行けなくても楽しんでもらえる本にしたい、ということ。ファンのみなさんにクスッと笑ってもらえるように、客観的な紹介文ではなく、旅情報のなかに原作エピソードを散りばめたつくりにしました。結果として『地球の歩き方』史上最も“奇妙”なガイドブックに仕上がりました」
『地球の歩き方』が大切にしている思いもこもっていた。
「ガイドブックって実用書なので、本来は読んでいて楽しいと感じるものではないのですが、『地球の歩き方』は、歴史や文化のコラムがあったり、旅の体験談や雑学がふんだんに入っていたりするので読み物として楽しまれている方もいらっしゃいます。
旅に行かなくても行った気分になれる、旅から帰って読み返してみて改めて発見があるなど、実用書としてだけではない楽しみ方をされているのを私たちもずっと感じているところではあったので、本書もそういう方向性にしたいなというのはありました」