コロナ禍をなんとか耐え抜いた観光立国タイ

「取材をしていて、もとのタイが戻りつつあるな、と感じました」

『地球の歩き方』タイの制作を担当する水野純さんは、そんな印象を話す。タイの首都『バンコク編』の2022年末発売に向けた取材から帰国したばかりだ。観光立国のタイはコロナ禍の影響が大きいようにも思うが、耐え抜いたところのほうが多いそうだ。

「レストランやホテル、バックパッカーの拠点・カオサン通りのゲストハウスなど、閉業したところは確かにあります。それでも、甚大なダメージというほどでもないと思います。みんな我慢して、しのいでいたのでしょう」

衛生意識は日本人そっくり⁉ コロナ禍からの復活を期すバンコクの今を、『地球の歩き方』編集室に聞く_1
雨季のタイを「バンコク編」の取材のため走り回った水野さん(撮影:室橋裕和)
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もちろん変化はある。週末は大賑わいとなったウィークエンドマーケットは、閉めている店が目立つ。土産物屋台とナイトライフで知られるパッポン通りにも店は出ていない。

「目に見える影響がいちばん大きいのは、日本人観光客に人気だったナイトマーケット『アジアティーク』かもしれません。そこではニューハーフショーの『カリプソ』を含む半分ほどの店が閉まっています」

それでも、少しずつ賑わいと観光客が戻ってきているという。

「ナイトマーケットでは『鉄道市場』も閉まったのですが、近くに再オープンしてお客さんが増えています。『アジアティーク』でも、そばを流れるチャオプラヤー川に古い帆船を係留して、そこで食事ができるようになって盛り返してきています。これはタイ海軍が使っていた軍艦をモデルに、レストラン&バーとして新しく建造したもので、気合の入った新アトラクションです」

しかし2021年のタイはそれこそ閑散としていたという。水野さんは「こんなときだから、タイで何が起きているのか見ておきたい」と、取材というわけでもなくコロナ禍のタイに何度か渡航し、到着後隔離の不自由さや、観光客のいなくなったバンコクの街を体感した。

「カオサン通りも王宮も、誰もいなかったんです」

しかし今年に入り、タイの入国規制が段階的に緩和され、少しずつ観光客が戻ってきた。こうした変化を見て、改訂版の刊行を決めたそうだ。