親子二代の夢を背負って
――金さん銀さんから始まって20年。今あらためて振り返ってみてどうですか?
大変なこともいっぱいありましたけど。っていうか、大変なことばっかりでしたけど(笑)、ずっと楽しかったです。どうしようと悩むのも楽しかったし、出来上がった作品を見るのも楽しかったし、みんなの笑顔を見るのも楽しかった。
おまけに、ニューヨークのイベントにみやびの着物を展示したいという依頼があり、実際に展示もさせてもらいましたから。もう最高です! という言葉しかありません。
――北九州に新しい文化を創ったということで、マスコミも大注目でした。
多くの取材を受ける過程で、違った視点からいろんなことを調べてくださって。その中のひとつに、北九州市が発表している、警察署が調べた刑法犯認知件数というのがあったんですが、2003年からの20年間で、刑法犯認知件数が80%も減少しているというデータがあったんです。
――本当ですか?
2003年が2万件を超えていて、現在は5,000件を下回っていると教えていただきました。ということは、ほんのちょっとかもしれないですけど、みやびもそれに貢献できているのかなと思って。10代後半の成人式に全エネルギーを費やしている若者たちにとって、犯罪を犯して成人式に出席できない、なんてことは最悪中の最悪ですから。
うちのお客様たちは、そんなバカなことはしないと言い切れます。それを考えると、ちょっと誇らしい気持ちにもなりますね。
――ちょっとじゃなくて、それはすごいことです。
工場で働いている男の子がいて。店に来るたびに、仕事はきついし面白くないと愚痴をこぼすんです。「もう、辞めたいんよ」と。でも、辞めたら衣装のレンタル代が払えなくなるから辞められない。そんな時は、ずっと袴にファーをつけるかどうかを考えながら仕事をしているというんです。
――きっと同じような経験をしている子がいっぱいいるんでしょうね。
そうなんです。そういう子の方が多いはずなんです。それでもみんな、その場に踏みとどまって頑張っている。その頑張っている子の思いに、応えてあげたい。応えることが私たちの仕事だと思うし、それしかしてあげられない。
「みんな頑張れ!」という気持ちを込めて、それぞれが思い描いていた衣装を用意してあげたいんです。
――新成人への最高のエールになると思います。最後にひとつ。金さん、銀さんからスタートして20年、その子どもたちが新成人としてやってきてもおかしくありませんが…。
そうか…そうですよね。まだ聞いたことはないですけど、七五三の衣装をレンタルに来たというのはありましたからね。
そうか。もう親子二代でみやびの衣装を着るという子が出てくるんですね。お父さん、お母さんが纏った衣装をそのまま着るとか、カスタマイズして着るとか、うんそれは楽しみです。それを楽しみに、まだまだ頑張ります!
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取材・文/工藤晋