900万円損失が出た年も。北九州のド派手成人式、20年間を振り返って はこちらから
近年、成人式といえばド派手な衣装で有名な北九州を思い浮かべる人が増えたのではないだろうか。20年もの間、そのド派手な衣装を支えてきたのはレンタル衣装店「みやび」だ。
式典を2週間後に控えた2022年のクリスマスイブにお店にお伺いすると、店内にはド派手な衣装が山積みだった。
「えっ!? 少しでも背を高く見せたいから草履の高さを2cm高いものにして欲しい?」
「わかった、なんとかしてあげて」
「新しく発注すると予算オーバーになる?」
「うーん、それでもなんとかしてあげて!」
…喧騒真っ只中の中で、店主の池田雅氏に話を聞いた。
「金と銀しかないっちゃ!
それを着て成人式に出るのがオレらの夢なんです!!」
――ド派手衣装の始まりは20年前、2003年の成人式と聞いています。
その1年前、2002年の成人式が終わったすぐ後くらいに2人の男の子、通称「金さん」と「銀さん」がお店にやって来て。背が高く身体のおっきい方が金さんで、細くてひょろりとした方が銀さん。2人ともパッと見は怖そうなんですけど、話をすると謙虚で人懐っこい笑顔が印象的でした。
――その2人のリクエストが……。
1年後の成人式で、金と銀の羽織袴を着たいって言うんですよ。男の子の羽織袴は黒とか白とか、せいぜい赤が一般的で、金と銀なんて聞いたこともない。だから素直に「ありません」って言えばよかったんですけどね(苦笑)。
――その一言が言えなかった!?
女の子は1年前から晴れ着の準備を始めるんですが、男の子は2、3ヶ月前に色を決めてもらって、あとはサイズの合うもの用意するだけだったんです。ところが2人がお店にやって来たのは1年前だったものですから。1年もあるのにその場で無理です、って言うのはどうなんだろう、という思いが頭の隅をかすめて。
「どーしても金と銀にしたいと! 金と銀しかないっちゃ! それを着て成人式に出るのがオレらの夢なんです!!」
そう語る2人の熱意に打たれたのもあったのかもしれないですね。
ついつい、「わかった。とりあえず取引先に聞いてみるね」って言っちゃったんですよ。
――すぐに見つかったんですか?
見つからなかったんです。10社あった取引先からすべてから、「無理ですね」「ウチにはないです」と言われてしまって。それはそうですよね、金と銀の羽織袴なんて見たことも聞いたこともないんですから(笑)。
これは困ったぞどうしよう?やっぱり断るしかなのかなと思っていたそのときに、またその2人がお店にやって来て……。
――がっかりしたでしょうね。
いやそれがですね。私が言い出すより先に、2人から「お金は親に払ってもらうんじゃなくて、自分たちで払いたいけん、毎月分割でお店に持ってきてもいいですか?」って言われちゃって。金さんは建築関係の仕事、銀さんは酒屋さんでアルバイトをしていたんですけど、5千円札、1万円札を手に握りしめながら、「これ、今月分ですっ!」と、毎月目を輝かせながら来るようになって。
――もうなんとかするしかないぞと!?
2人の目を見たら、やるしかないですよね(笑)。