お釈迦さまも妻や子を棄てた

不倫中のビジネスパーソンの悩みに大阿闍梨は…「善悪の砦に引きこもるような論評はいたしません」_1
すべての画像を見る

不倫は善いこと、それとも悪いことでしょうか。道行く皆さまに片っ端から尋ねたなら、多くのかたは「悪いことである」とお答えになるかもしれません。

お釈迦さまはもともと、ゴータマ・シッダールタの名を持つ釈迦族の王子でした。16歳の頃には結婚し、子供も授かっておられます。けれど26歳になったとき、お釈迦さまは王子の地位も、妻のヤショーダラーも、子のラゴラも捨てて、カピラ城から忽然と姿を消してしまいました。

これが「出家」の起原です。お釈迦さまが妻や子を棄ててしまっているのですから、仏教的な考え方の上では――法律やモラルと同じ地平に立って――不倫の正否を一刀両断することはできません。

仏教において、人生や物事は「諸行無常」です。この4文字は「儚い」と考えられがちですが、「変わらないものはない」というのが、本当のところ。
ゆえに私にとって、あなたからの質問は成り立ちません。〈関係をやめられずに2年が経ちました。私はこのままでいいのでしょうか〉とおっしゃいますが、仏教は〈このまま〉という概念を拒むところから始まっています。

たとえ、あなたが不倫を続けようとしても、ずっと、このまま続くことはありえません。あなたと不倫相手の関係はかならず変化しますし、妻や子供との関係も変わります。
今でさえ、あなたが〈このまま〉と思い込んでいるだけで、とっくに変わってしまっている可能性も否定できないでしょう。