ブレイク中の松永伶の走りに注目
上尾シティハーフで、内田を上回る走りを見せたのが松永だった。
「『全力で行ってこい』って送り出したんですけど、そしたら(予想以上に)走っちゃいましたね……」
指揮官も松永の走りに驚きを隠さなかった。
松永にとっては、この上尾シティハーフが初めてのハーフマラソン。それにもかかわらず、法政大タイ記録となる1時間2分3秒をマークし、4位入賞を果たした。
「坪田監督からは『15㎞で落ちてもいいから、ある程度は先頭についていこう』と言われていました。ハーフのタイムがどれくらいなら速いのかよくわからなかったんですけど、(1㎞を)2分50秒から2分55秒くらいのペースでいくことができたのはよかった。初ハーフでしたが、いい経験になったと思います」(松永)
ちなみに、松永も、内田と同じように前週に10000mを走り、28分34秒33の自己ベストをマークしている。
今季、松永の名前を世に知らしめたのは5月の関東インカレの5000m決勝だった。残り2周を切ってロングスパートを仕掛け、東京五輪代表の三浦龍司(順天堂大3年)らを相手に大胆な逃げ切りを図ったのだ。
結局、三浦らに抜かれ6位に終わったものの、思い切りのいいレース運びで、あの日、スタンドを最も沸かせた。
トラックだけでなく、ロードでも結果を残し、大きな自信をつかんだ松永は1区にエントリー。今度は箱根でも周囲をあっと驚かせる走りを見せてくれそうだ。
「法政大史上最強チーム」で挑む
坪田監督がメンバー選考に頭を悩ませたように、このふたりだけではないのが今の法政大だ。
出雲で好走した小泉も、内田や松永が出場した11月の日体大長距離競技会で10000m28分台の好記録をマークしている。また、MARCH対抗戦2022では宗像直輝(3年)、中園慎太朗(4年)が10000m28分台をマークした。
「上位10人の10000mの平均タイムが、法政の歴史で初めて28分台に乗った」(坪田監督)
経験豊富な上級生に、新戦力も出てきており、数字の上で「法政大史上最強チーム」ができあがった。
また、箱根を戦う上で、特殊区間の5区、6区の経験者である、細迫海気(3年)と武田和馬(2年)がいるのも頼もしい。
2年連続のシード権はもちろん、目標の5位以内に向けて、戦力はそろった。
前回のシード権が“棚ぼた”ではなかったことを、新年の箱根でも示してくれるだろう。
取材・文・撮影/和田悟志