惨敗を経て大きく成長
その一方で、もろさも見え隠れした。
6月の全日本大学駅伝関東地区選考会は自信を持って臨んだはずなのに、選手に熱中症のアクシデントがあったとはいえ、それを立て直せずに14位と惨敗。本大会出場を逃し、駅伝シーズンに不安を残した。
ところが、ひと夏を越えて、チームは頼もしさを増した。
学生駅伝初戦の出雲駅伝は、過去最高の7位という結果だった。その順位以上に、レース内容に坪田監督は手応えを感じていた。
「夏合宿をきっちりできたメンバーを出雲に連れていったので、それなりに走るだろうとは思っていました。特に、3、4、5区はけっこう自信があった。そこがしっかりとハマりました」
まさに狙い通り。3区の内田と4区の扇育(4年)はそれぞれ区間4位、5区の小泉樹(2年)は区間3位と、区間上位の走りを見せた。
小泉は1年時から箱根駅伝で主要区間を任されている次期エース候補だが、前半戦は膝のケガが長引き試合に出られずにいた。その小泉の復活は明るい材料だった。
主将・内田隼太の記録更新に期待
出雲で、坪田監督が何よりも収穫に挙げたのが、3区の内田の走りだった。
「単独走はどうなのかなって思っていたので、夏ぐらいには内田を出雲の3区に決めていた」(坪田監督)
内田は、昨年度の全日本と箱根で1区を担い、一斉スタートのレースでは十分に評価に値する走りを見せている。それだけに、出雲では、駅伝独特の単独走が試されたというわけだ。
そして、その起用にきっちりと応えてみせた。
各校のエース級が集まった3区で、区間4位と健闘。駒澤大の田澤廉(4年)に6秒差、青山学院大の近藤幸太郎(4年)には5秒差と、今季の学生長距離界を代表する選手たちにも迫った。
内田はその後も好調をキープ。11月には10000mで、徳本一善さん(現・駿河台大学監督)がもつ法政大記録にあと1秒に迫る、28分16秒68の自己ベストをマークした。
さらには、その翌週の上尾シティハーフマラソンでは、練習の一環として出場し、余裕をもって走ったのにもかかわらず、1時間2分12秒の自己ベストで5位に入った。
「もともとポテンシャルはすごく高い選手だし、スピードもあるので驚きません。でも、2週続けて走れたのは収穫。スタミナがついているのも証明できた。本人もかなり自信になったと思います」(坪田監督)
箱根では、予想通りエース区間の2区にエントリーされた。2区の法政大記録は、前回、高校の先輩でもある鎌田航生(現・ヤクルト)がマークした1時間7分11秒。
「条件さえそろえば、たぶん1時間6分台はいきますね」と指揮官も、法政大記録更新に太鼓判を押す。