妻による値段交渉の末、
状態のいいアンティークラジオをゲット!
その後は順路に従い、いろいろなものを食べたりしながら露店を一軒ずつ見てまわった。
妻は妻で手作りのニットキャップや木彫りのキーホルダー、古いアメリカのナンバープレートなどを買って喜んでいるが、僕はなかなか買うものが見つからなかった。
立ち止まってじっくり吟味したものは多いのだが、気になるクラシックカメラやアンティーク腕時計は、買ってみたものの使い物にならなかったらもったいないという気持ちが先立ち、財布に手が伸びない。
でも盛り上がる会場の雰囲気に触発され、気持ちがウズウズして仕方がなかった。
フリーマーケットの買い物客特有の一種の病気のようなものだと思うが、しまいには頭が少々バグってきたのか、骨董屋によく並んでいる仏像やアフリカの手彫りのお面、模造の日本刀などを手にし、(これ、いいかも。買おうかな)と悩んでしまう。
すると、他の店を見ていたはずなのに、いつの間にか音もなく僕の横に来ていた妻に、耳元で「いらないいらない」と囁かれ、ハッと我に返ったりした。
そんな僕の頭から最後まで拭い切れなかったのが、最初に目にした据え置き式のアンティークラジオだったのである。
僕は「やっぱり、あれだけは買うよ」と妻に宣言し、第二会場端っこの最初の店に引き返した。
アンティークラジオは他の露店でもたびたび見かけたが、その店で買おうと思った理由のひとつは、品質が信用できそうだったからだ。
試聴するとどのラジオも良い音が出たし、古いながらも筐体は綺麗にクリーニングされていた。
店主に聞くと、すべて自分でオーバーホールをしているし、故障した場合も連絡をくれれば修理すると言う。
前述のキーボードのキーだけではなく、店内には昔の秋葉原でよく見かけた、何に使うのかわからない電子部品なども大量に並べられているので、きっとそういうことが得意な人なのだろう。
だから12,000円という、他の店よりも少し高めの値付けも気にはならなかったのだが、こういうフリーマーケットでは値段交渉も醍醐味だ。
とは言うものの、僕はその手の交渉が大の苦手。
ここはいつも通り、営業畑で交渉ごとが得意な妻に任せ、一歩さがってその様子を見守ることにした。
すると、11,000円までの値引きで片を付けたいと思っているらしい店主に対して妻が粘り、見事10,000円に!
さすが妻ちゃん!
でも、どうも申し訳なかったので、例のスネークマンショーの謎缶をひとつ、一緒に買おうと思ったら、なんとそれはオマケでくれると言うではないか。
明らかにつげ義春の『無能の人』オマージュである“ひろった石”や、この明らかに著作権法違反である手作り“スネークマンショー缶”は、もともとシャレで置いてあったもので、気づいて買おうとしてくれた人にはタダでプレゼントしようと考えていたそうだ。
この人いいな〜好きだな〜と思ってしまった。
間違いなく、何かが少しぶっ壊れたサブカルビンボー人だ。
こりゃ友達になれそうだなと感じ入るものがあった。