ポジティブな時間をつくり、生活を豊かにしたい

栗栖さんは、かつてNTTドコモでサービスの企画開発を行っていた人物だ。「しゃべってコンシェル」や「イマドコサーチ」といった同社の大規模なサービス開発に携わった後、シリコンバレーへ赴任。帰国後、仲間とともにセントマティックを起業した。2018年のことである。

栗栖代表は、なぜ「香り」に着目したのか。

「社会課題を解決するのも大事ですが、私はそこから先のポジティブな時間をつくることが、生活を豊かにするうえで重要だと思いました」

生きていくうえで絶対に必要というわけではないが、あると生活がもっと豊かになる––そんなサービスを作りたいと考えた末、栗栖代表が辿り着いたテーマが「香り」だった。

AIが難しい日本酒やフレグランス選びをサポート。“香り“を言語化する「KAORIUM」を体験してみた_2
SCENTMATIC株式会社の代表取締役・栗栖俊治さん

ところが、ここで思わぬ壁が立ちはだかった。

「香りをテーマに起業したスタートアップは過去にいくつもありました。しかし、そのほとんどが上手くいかず、事業を継続できていなかったのです」

香りに関するビジネスがことごとく失敗に終わった最大の理由は、「日本国内にマーケットニーズがなかったこと」。ニーズありきで生まれる社会課題解決型サービスと違って、香り系サービスのように「なくても生活自体は困らないもの」を広めるには、ニーズを掘り起こすところから始める必要がある。

この難題に栗栖代表の出した答えが、KAORIUMである。