これまでになかった「香りと言葉の融合体験」

KAORIUMを一言で表すと「香りと言葉の融合体験」となる。新しい概念だけに、少し解説が必要だ。

栗栖代表によると、五感は「言葉」と結びつくことで体験を拡張できるという。たとえば、視覚と言葉を組み合わせたものが「漫画」であり、聴覚と言葉を組み合わせたものが「歌」である。視覚や聴覚は情動的な感覚だが、そこに言葉が加わることでまったく違う感覚や体験が生まれるわけだ。

では、香りはどうだろうか。

香水のように香りそのものを楽しむプロダクトは以前から存在したが、香りと言葉を融合した「体験」はほとんど見られなかった。その理由には、冒頭で説明したように嗅覚のメカニズムがそもそも解明されていなかったこともあるだろう。

しかし、現在では嗅覚の研究も進み、さまざまな香り成分も明らかになってきた。たとえば、昔から「ラベンダーの香りにはリラックス効果がある」といわれてきたが、ラベンダーに含まれるリナロールという成分がその効果をもたらしていたと判明したのは2018年頃のこと。人間の感覚に、ようやくサイエンスが追いついてきたのである。

AIが難しい日本酒やフレグランス選びをサポート。“香り“を言語化する「KAORIUM」を体験してみた_3
香りと言葉を結びつける、香りの言語化AI「KAORIUM」のコンセプトイメージ(写真提供/SCENTMATIC株式会社)

加えて、日本のフレグランス市場の拡大も追い風となった。世界に比べると日本における香りのマーケットはまだまだ小規模だが、その成長率は毎年5%増とかなりのもの。特に2008年に発売された香りのする柔軟剤「Downy(ダウニー)」がゲームチェンジャーになったと、栗栖さんは分析する。

香りの研究が進み、日本にもマーケットニーズが少しずつ生まれ始めたことが、KAORIUM誕生の背景となったのである。