香りがビジネスにもたらす可能性とは?
実際にKAORIUMを体験した。
KAORIUMは、ユーザーが好む香りを言語化したうえで、その人の好みに合いそうな別の香りを提案してくれるプロダクトである。
まず、ユーザーは用意された香りを嗅ぎ、その中から気に入ったものを3種類選ぶ。すると、選んだ香りに付随するイメージを表した言葉――「さわやか」「リラックス」「華やかな」など――がいくつも表示されるので、そこからしっくりくる言葉を選択する。すると、選んだ言葉をもとにKAORIUMが別の香りをいくつか提案してくれるので、再び好きなものを選ぶ。
この流れを何度か繰り返すことで、無数にある香りの中から自分の好みにぴったり合うものを探し出せたり、自分の好きな香りがどんな言葉で表現できるのかを知れたりするわけだ。
ポイントとなるのは、香りに付随する言葉をどうやって決めているのかということ。香りに対するイメージは人それぞれ異なるだけに、誰もがしっくりくる表現を選ぶのは難しい。
KAORIUMは、この部分にAIを活用している。AIがインターネット上に存在する膨大な量の言語表現を学習し、香りのイメージを的確に言語化するのだ。
KAORIUMが生み出した「香りの言語化」と「言語をもとに香りを選ぶ」という体験は、今後さまざまなビジネスやサービスを変革するポテンシャルを秘めている。
たとえば、商品企画やマーケティングへの活用だ。KAORIUMがあれば多くの人が自分自身の好む香りについて言語化できるようになる。それにより、香水や洗剤など香りを活用した商品の開発やマーケティングの質は飛躍的に高まるだろう。
現在KAORIUMは、日本酒やチョコレートなど、香りが重要な飲食物をユーザーが選ぶフォローにも活用されている。たとえばレストランや居酒屋、小売店におけるお酒選びをサポートするツール「KAORIUM for Sake」は、利酒師やソムリエがいるような接客体験を可能にしている。
また教育分野では、「生活科」向けの新しいプログラムとして「カオリウム実験室」を開発中だ。香りを言語化することで、子どもたちの嗅覚の解像度を高め、五感の活性化につながるという。
この他にも、KAORIUMを活用したいくつものプロジェクトが進行中だ。KAORIUMによる“香りの言語化”が世の中にどんな影響を与えるのか。今後の展開に期待したい。
取材・文/山田井ユウキ