精神をすりへらしながらも
11月27日のコスタリカ戦、権田は敗戦につながる痛恨の失点を喫した。相手が枠内に入れたシュートはわずか一本だったが、それを止められなかった。当たりが悪いキックだったため、ループシュートのようにタイミングを外された形になった。
ジャンプの最高到達点でボールに触れず、両手キャッチにいったような格好で、最後はボールがふわりとネットを揺らした。
「最後、枠に来たボールを止めるのが自分の仕事で。少しタイミングが合わず、体が伸びきったところで、決められてしまった」
権田はそう語って、失点の責任を受け止めた。本人が認めているように、自身のポジションも中途半端だったし、判断も悪かった。
だが、背景には味方のミスの連鎖があった。三笘薫がサイドの緩いディフェンスで入れ替わられ、伊藤洋輝は禁じ手の中へのヘディング、吉田麻也がパスかクリアかわからないキックをし、最後はフリーで打たれたシュートだ。
これはチーム全体の失点だが、繰り返しVTRで流されるのは、権田がボールを弾けず、失点した風景だ。
権田はかつてうつ病だったことを告白している。GKは多かれ少なかれ、心理面でギリギリのところに立っているだろう。たとえ誰かに指摘されずとも、試合で自分の失敗を見つけたら、脳裏に焼き付いて眠れない。
トレーニングで同じシチュエーションを再現し、失敗の回避にめどを立てて安堵しても、こびりついた不安は残る。それでも再び心を鼓舞して今日もゴールマウスに立つ。
そんな、すべてのゴールキーパーたちに祝福があらんことを願う。
取材・文/小宮良之 写真/スエイシナオヨシ