「ユニフォームを脱ぐとわからないことが多くなる」
――“外から見た野球”はどうでしたか?
実際にシーズンを戦っていると1年間はすごく長いですし、様々な局面があります。ユニフォームを着ている間は、選手の思いなどを直に感じることができたとしても、ユニフォームを脱いでしまうと、それがわからない状態で野球を見なければなりません。
フラットに見ることができるという意味ではよかった部分もありますが、やっぱり現役時代とは野球の見え方が全然違いました。チームの一員であれば、流れや雰囲気、あるいは練習している姿から、ある程度結果を予測することができるのですが、それが一切なくなったことで、本当に予想がつかないことが多かったです。
「今まではユニフォームを着ているからこそ、わかることがたくさんあったんだな」「ユニフォームを脱ぐとだんだんわからないことが多くなるんだな」と感じました。
この誤差が何年も積み重なっていくと、実際に野球界で起きていることと、解説や評論で言うことに差異が生まれてしまうのかもしれませんね。
――鳥谷さんの解説や評論は、評判がいいと聞いています。
いやいや…。それはもう今まであまり話をしてこなかった分、興味を持って聞いてもらえただけです。自分の解説や評論がすごいなんて、全く思っていないですよ。
心掛けているのは、プレーしている選手に敬意を持つことと、なぜそのプレーが起こったのかをわかりやすく説明することです。
選手を評価するのが解説だとは思っていないので、「鳥谷敬の解説はつまらない」と感じられる部分もあるかもしれませんが、自分の考え方はブレません。
解説を聞いた上で、チームや選手を評価するのはファンの方々だと考えています。ファンの方々に「この選手が好き」とか、「この選手をもっと起用してほしい」と感じてもらえるように、いいプレーに関しては、できるだけその素晴らしさを伝えたいと思っています。
――解説者・評論家としての手応えは感じていますか?
手応えですか…? まあ…、あるわけでもないし、ないわけでもないです(笑)。
構成/飯田隆之