人気俳優が続々と監督業に進出
1992年は激動の年だ。表紙を飾った14人(5月号と7月号がツーショットのため)のうち、なんと10人が初登場である。
『バットマン・リターンズ』(1992)のミシェル・ファイファー(4月号)、『ツイン・ピークス』(1990)のカイル・マクラクラン(6月号/来日時の特写)、『氷の微笑』(1992)のシャロン・ストーン(8月号)、『遙かなる大地へ』(1992)のニコール・キッドマン(9月号)、『エイリアン3』(1992)のシガーニー・ウィーヴァー(10月号)、『リーサル・ウェポン3』(1992)のメル・ギブソン(11月号)と、そうそうたる顔ぶれだ。
人気俳優が相次いで監督業に進出するようになったのもこの頃だ。それまでは70年代に監督業をはじめたクリント・イーストウッド、バーブラ・ストライサンド、ウォーレン・ビーティと、『普通の人々』(1980)でデビューを飾ったロバート・レッドフォードくらいで、彼らは例外的存在だった。
先鞭をつけたのは、12月号の表紙を飾っているケヴィン・コスナーだ。『アンタッチャブル』(1987)や『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)でトップスターになったコスナーは、どのスタジオも作りたがらなかった歴史劇『ダンス・ウィズ・ウルヴズ』(1990)において製作・監督・主演を務めた。同作は大ヒットとなったばかりか、アカデミー賞7冠に輝いている。
続いて、子役から息の長い活動を続けるジョディ・フォスター(1月号)も『リトルマン・テイト』(1991)で監督デビュー。メル・ギブソン(11月号)も『マッドマックス』(1979~)や『リーサル・ウェポン』(1987~)のシリーズで人気を得、『顔のない天使』(1993)でメガホンをとった。監督第2作『ブレイブハート』(1995)では、作品賞、監督賞を含むアカデミー賞5冠に輝いている。
この頃から、自分好みの脚本が送られてくるのをただ待っているよりも、好きな役柄が登場する映画企画を自ら立ち上げるトップ俳優が増えてきた。9月号の表紙に登場したニコール・キッドマンも、しばらくのあいだは女優1本で活躍していたものの、最近は『ビッグ・リトル・ライズ』(2017~2019)『フレイザー家の秘密』(2020)『ナイン・パーフェクト・ストレンジャー』(2021)といったTVドラマを自身の製作会社で開発しつつ、主演を務めている。