フェーズ4の山場の一つはスパイダーマン

そしてフェーズ4の山場の一つが、2021年12月に公開された話題作(映画)『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』だ。本作は今後のMCUを占ういくつかのポイントを含んでいる。

もともと映画作品として、スパイダーマンはソニー・ピクチャーズ配給で過去に複数のシリーズがあった。ソニーとマーベル・スタジオの話し合いにより、MCUにスパイダーマンが合流したのは、それ自体が画期的なことでもある。

MCU版の第3弾で、最終章となるのが本作。そして、ここで本格的にマルチバースが作品に影響を与える。

第2弾『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』で、ヴィラン・ミステリオの捨て身の策略により、正体が高校生のピーター・パーカーであることを世界に明かされてしまったスパイダーマン。さらに、ミステリオが最期に自身こそ“ヒーロー”であり、それを倒したスパイダーマンこそが悪だと主張したため、社会の評価も二分されてしまう。

これは現代社会の「フェイクニュース」や「陰謀論」の問題にもつながる。声高に社会にアピールされたことがメディアやSNSを介して広がり、何が真実かわからなくなってしまう点で、同じことが起きている。

ピーターは容疑をかけられ、尋問される仲間や家族、恋人を救うために、魔術師のヒーローであるドクター・ストレンジに、ピーターの正体を忘れさせる呪文の行使を依頼する。しかし、生来の落ち着きのなさが災いし、ピーター自身が邪魔をしてしまったことで、呪文は失敗。

ここで過去のソニー作品ファン、というより、スパイダーマン関連作品(スパイダーバース)ファンが息を飲む展開が起きる。作品、配給会社の壁すら越え、「マルチバースのキャラクター」として、過去作のあのヒーロー、あのヴィランたちがMCUのスパイダーマンを巡り、混戦するのだ。

特に通称「ピーター2」「ピーター3」の登場は、往年のファンの中には、実際に涙を流した人も少なくないだろう。第2弾ではある意味で“肩すかし”だった「マルチバース」が作中で機能し、かつ、すばらしい展開になったためだ。

ただし、本作の後味は、スパイダーバースに共通する「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というテーマに則り、過去作同様に、決して良くはない。今後がもっとも気になるヒーローの一人だ。