5,000万円を持ち逃げされたことも! あのメイウェザーも立ち寄った銀座のジュエラー。マイク・カワグチ氏の叩き上げ半生_02

英語もできない状態で渡米し、
元手もほとんどないところから叩き上げ

――ニューヨークのアメリカンジュエリーショップ、TRAX NYCとはどういう関係ですか?

TRAX NYCの商品が好きだったので、すごい数を仕入れては売っていたんですよ。すると向こうから「お前はなんなんだ? 俺のところのものを随分いっぱい売ってるじゃないか。だったら一緒にやらないか」と誘われました。それで、経営は別々なんですけど、日本でも同じ名前の店を開くことになったんです。生活するために日銭を稼がなきゃともがいていたら、必然的に今のTRAX TOKYOにつながったという感覚ですよ。

――TRAX NYCのオーナーはアゼルバイジャン出身の方ですよね。

ええ。やつも苦労してきたんですよ。紛争から逃れるために家族でニューヨークに移住してきたんですが、高校をドロップアウトして、安いデジカメ一台持ってニューヨークのいろいろなジュエリー屋を回り、ウェブサイトを作ってその店の品物を売る、ということを繰り返して今に至っているんです。

――マイクさんもですけど、たくましい話ですね。

みんな元手100ドルとか、マイナスの状態とかから始めてますからね。

――マイクさんは、英語はもともと得意だったんですか?

全然。アメリカに行くまではまったくできなかったんですけど、現地で生活していくうちにビジネス英語を覚えていきました。

――英語もわからない状態で単身渡米して、そこまでやるっていうのは相当な根性ですよね。怖い経験などはしなかったんですか?

それが、特にないんですよね。人が怖いと思ったことはなくて、それより仕事がなかったり物が売れなかったりするほうが怖かったです、どちらかというと。

――仕入れはどのようにされているんですか?

僕らの商売は英語で“グレーマーケット”、日本語では“古物商”と呼ばれる二次流通の業種です。一次流通のメーカーさんが売ったものを僕らがお客さんから下取りし、次の方にお渡しするという立ち位置です。
日本の場合、古物商というと大黒屋さんやなんぼやさんのように、質屋から発展した大きな会社が多いんですけど、アメリカは質屋のようなシステムがもともと少ないので、グレーマーケットも個人経営が多いんですよ。

――TRAX TOKYOさんの商品を見ていると、“古物商”という言葉の響きとはかけ離れているようにも感じます。

最近は時計の価値がどんどん上がっていますからね。たとえば新品では130万円で売られたロレックスのデイトナが、二次流通で400万、450万という値段で動くことがあります。もちろん、欲しい人の数が多いから価値は上がっていくのですが、僕らのような職種はそうしたマーケットの価格を下支えする役割ですね。