唯一無二のトム・クルーズ

ウィノナ・ライダーやグロリア・イップが誕生。初登場のトム・クルーズが今でもハリウッドに君臨する理由は?_2
記念すべきトム・クルーズ初表紙号 ©ロードショー1989年5月号/集英社

初登場でもっとも注目すべきは、いまや「最後のハリウッドスター」と呼ばれるトム・クルーズである。1989年は『カクテル』と『レインマン』(共に製作は1988)という、彼のキャリアを象徴するような2作が公開されている。

『カクテル』は絵に描いたようなアイドル映画で、当時の観客が彼に求めていたタイプの作品だ。一方、『レインマン』は自閉症の兄との旅を描く感動ドラマである。アカデミー賞で作品賞など4冠に輝き、批評・興行ともに大成功を収めたものの、従来のトム・クルーズファンが期待するタイプの作品ではないだけに、失敗の危険性が大いにあった。

その後も、ヴェトナム戦争で心に傷を負った帰還兵を演じた『7月4日に生まれて』(1989/オリヴァー・ストーン監督)、軍法会議がテーマの『ア・フュー・グッドメン』(1992/ロブ・ライナー監督)、当時の愛妻ニコール・キッドマンとのベットシーンも話題となった『アイズ・ワイド・シャット』(1999/スタンリー・キューブリック監督)、入り組んだ群像劇『マグノリア』(同/ポール・トーマス・アンダーソン監督)など、曲者監督による、内容としても役柄としてもシリアスで、ある意味リスキーかつチャレンジングな作品を選んでいく。

と同時に『ミッション:インポッシブル』シリーズのようなエンタメ映画もおろそかにせず、出世作の続編『トップガン マーヴェリック』(2022)を36年後に製作して世界的ヒットを飛ばしたりもしている。

安定と挑戦というふたつの軸を持っているからこそ、トム・クルーズは唯一無二のスターになれたのかもしれない。

表紙リスト
1月号/リヴァー・フェニックス 2月号/グロリア・イップ※初登場 3月号/アリッサ・ミラノ 4月号/ジェニファー・コネリー 5月号/トム・クルーズ※初登場 6月号/グロリア・イップ 7月号/アリッサ・ミラノ 8月号/ウィノナ・ライダー※初登場 9月号/リヴァー・フェニックス 10月号/フィービー・ケイツ 11月号/エマニュエル・ベアール※初登場 12月号/アリッサ・ミラノ ©ロードショー1989年/集英社