「怪演でカムバック」が急増中。その事情とは…

そして近年とても多くなっているのが「みそぎとしての怪演」のパターンである。私生活などで色々ゴタゴタあった人が「怪演でカムバック」するケースが増えているのだ。

その代表例といえば高嶋政伸だろう。元々好青年役が多かった高嶋は、泥沼離婚、DV疑惑などでワイドショーの話題となり、その後はすっかり怪演俳優に生まれ変わった。最近では正統派の役をやっても「裏があるのでは」「この後、実は悪い人なのでは」などと勘繰られるようになっている。

その他、ひと頃「怪演女優」の代名詞になっていた水野美紀もこのパターンだし、近時のベッキーもそんな感じである。

興味深かったのは最近の小出恵介のインタビューで「今の自分の状況では、癖のある役柄の方が声がかかりやすいかなと思うんです。そうした役もありがたいですが(中略)ポジティブで正義感あふれる男性像のキャラクターをまたいただけたというのが、すごくうれしかったです」と語っている。

やはりゴタゴタあった人は、「怪演」でないと使いづらいという傾向はあるようだ。

俳優界に異変。イメージ刷新のための「怪演」からみそぎ落としの「怪演」へ‗01
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そこでちょっと気になるのは梨園方面の昆虫の好きなあの方である。

元々『龍馬伝』(NHK)あたりから濃厚なやりすぎ感のある演技が売りになり、『半沢直樹』(TBS)など顔芸も駆使した演技が印象的だったあの人は、謂わば「怪演カード」をもう切ってしまっている状態だ。どうするのだろうか。

これまで色々なパターンの怪演を見てきたが、近時「怪演」という言葉は、随分と安易に使われるようになっている気がする。最近のニュースを検索しても、えっあれが怪演?と思うようなものも数多くあった。

元々「怪優」にしても「怪演」にしても明確な定義がない言葉だが、冬彦さん世代の私からすれば「怪演」は振り切った演技にこそふさわしいと思ってしまう。

先述の通り、近年は「みそぎとしての怪演」パターンは増えている。あの人やあの人が、しばし後、どこまで振り切った怪演を見せてくれるか、楽しみである。

文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太