あるブログ記事が作り上げた禍々しい小山田圭吾像

アンダーグラウンドな閉域から「2ちゃんコピペ」を引き出したのは、まずはあるブログ記事だった。「小山田圭吾における人間の研究」と題するこの記事は2006年から存在していたが、2012年夏、大津市の中2自殺事件が世間の注目を集める中でにわかに大反響を得て、以後10年近くにわたり読みつがれ、2021年夏の騒動を静かに準備していく。

このブログ記事は、自慰と食糞の強要が記された「2ちゃんコピペ」をそのまま冒頭に掲げ、そこに続けて『QJ』の「いじめ紀行」からの引用を組み合わせることで、『ROJ』には存在しない障がい者いじめの文脈を結びつけている。最初の引用箇所は、「沢田」氏の性的羞恥心の乏しさに付け込み、下半身を露出させて笑いものにしたという高校時代のエピソードだ。

残酷な逸話と言うほかないけれど、小山田氏はこの件に積極的に加担したのではない。このブログでは省かれているが、『QJ』ではその後に、小山田氏が「ちょっとそういうのはないなー」と感じ、級友たちの悪事を半ば引きながら見ていたという発言が続く。

友人の苦境を前にしてのこうした傍観者ぶりを咎めることはできるだろう。しかし少なくとも筆者には、完全に理想的とは言えないにしても意義深い交流を築いていたように思われる小山田氏と沢田氏の関係について、数十年の時を越えて外野から口を挟む資格が自分にあるとは思えない。

こうしてこのブログ記事は、「自慰と食糞を強要し、障がいのある生徒を性的に虐待して楽しむ小山田圭吾」という、すべてが事実に反する禍々しい人物像を作り上げた。