日本人はなぜか歌謡曲のメロディを捨てられないー中森明菜再始動宣言・マーティがその魅力を読み解く_04
「アイドルの曲でもギターソロやギターのキメが多いから、うらやましい」とギタリストらしいエピソードも。

世界でも稀有な歌い方をする明菜は現代でも通用する!

――好きになった曲は?

『難破船』(1987年)です。ボーカリストとしての魅力がこれでもかというくらい詰まっています。ささやくような歌い方、ガチセクシーな声、表現力、どれも素晴らしい! これは溶けるね。幸せです。しかも伴奏が80年代っぽくないから、音の古さが気にならず、声に集中して聞けます。

――ベタ褒めじゃないですか!

そうね。この曲の明菜ちゃんみたいな歌い方をする人はアメリカにいないんですよ。1950〜60年代に活躍したジュリー・ロンドンとか、ナイトクラブ歌手が近いと思います。イージーリスニング(1950年代~1970年にかけて人気があったジャンル。ムード・ミュージックともいわれる)に近いから、大人っぽさがあって、もうアイドルの範疇じゃないよね。普通の歌手になりたかったんじゃないですか。

――どの辺りからその気配を感じましたか?

『十戒』(1984年)からです。彼女は、当時なりのセクシーなアピールで、聖子ちゃんとの違いを打ち出そうとしていたかもしれません。その後の『ジプシー・クイーン』(1986年)は、間違いなく聖子ちゃんよりセクシー。ディープなボイスでセクシーな表現をしようとしてます。

僕が聴いて感じたことですけど、曲そのものは聖子ちゃんの方がワンランク上だと思いますが、表現の引き出しは明菜ちゃんの方が豊富に持っていたかもしれません。

――令和に中森明菜さんは受け入れられそうですか?

今の若い子がイイ!と思う要素はかなりありますね。カッコよさに若い子が憧れて、もっと調べたくなって、レトロファッションを真似しはじめたりして、新しいアイデアが生まれそう。

そう、あとこれ大切なんですが、明菜ちゃんの声は誰もが受け入れやすくて、嫌われないんです。聖子ちゃんは聴いたらすぐ誰かわかるけど、印象が強すぎる分、好き嫌いが分かれますね。

――明菜さんから「プロデュースして欲しい」「ステージでギター弾いて」などの依頼があったら?

ずっとファンだった聖子ちゃんと同じぐらいイイと、今日思いました。だから、プロデュースは本当にやりたいですね。マッシュアップしてモダンにすれば、タイムレスなバージョンはいくらでも作れます。明菜ちゃんの曲は現代の音楽と共通する良いポイントがあるから、けっこう輝けるはずね。新曲が売れるかは曲次第ですから、そこは気にしないで。
明菜ちゃんがやりたければ、絶対に復活していいと思います。その時は、喜んでギターを弾きますよ!

取材・文・撮影/祝夙川はと