いいところを「報告する」というスタンス

相手をホメるときに澤田さんが基準にしているひとつが、「自分の心が動いたかどうか」だという。

「僕の提案するホメ出しは、『こうホメておけば自分が得をするから』『相手によく思われたいから』という意図でホメたりすることとは違います。『あなたには、こういうすばらしい一面がありました』『こんないい一面を見つけたので、伝えますね』と相手に報告することが、ホメ出しの基本スタンスです。

一対一で誰かとコミュニケーションを取るときは『いいところを絶対に見逃さないぞ』という姿勢で相手と全身全霊で向き合うようにすると、必ずどこかで『あ、この人のここが素敵だな』と心が動く瞬間があります。それは日常的に接する人であっても、初対面の人であっても同じです」

職場など、複数の人とコミュニケーションを取る場でのホメ出しにもコツがあるという。

「会議や打ち合わせのような場では、仕事は仕事として進行しつつ、『今日はBさんのいいところを見つけるぞ』と一人だけに意識的にロックオンしておくことで、その人のホメ要素を見つけやすくなります。

また、『森』ではなく『木』の部分を見てホメるという着眼点もひとつあります。会社の後輩に対して『いつも仕事が丁寧だね』とホメるのも素晴らしいのですが、その『仕事が丁寧』をちょっと分解してみる。

たとえば『抜け漏れがないように、何度も資料をチェックしてくれているよね』といったホメ方のほうがより具体性があり、相手の印象に残りやすくなります」

「ダメ出し」からの卒業。「ホメ出し」で軽やかに人間関係を築くコツ_2
現在、言葉と福祉とスポーツを専門に活動する澤田さん。東京2020パラリンピックでは閉会式のコンセプト/企画を担当した