大手メディアはインボイス問題を徹底的に無視

この申し入れの後、市民連絡会はそのまま同じ会場(衆議院第二議員会館)で約45分間にわたって記者会見を開催。反対声明読み上げや、申し入れ時の質疑内容について報告した。質問6点目の本名バレ・個人情報流出については、質問者の小泉なつみ氏が自ら2分半にわたって説明した。

<小泉氏 説明の要旨>
・氏名を含む個人情報が全件ダウンロードできて商用利用可能な問題については、今年7月には各団体と共に反対声明を表明するほど強い危惧を抱いている
・商用利用可、全件ダウンロード可の意図を問い質した結果、大企業の利便性を優先していると分かった
・個人事業主は納税のために登録せざるを得ない情報が本名バレ・住所バレに繋がる問題について、何の対策もしておらず、想像すらしていない
・問題点を指摘しても、是正する予定すらない

*小泉氏の実際の説明は上記YouTubeの37分29秒から視聴可能
*外部配信サイト等で動画を再生できない場合は、筆者のYoutubeチャンネル「犬飼淳」を参照下さい。動画タイトルは「インボイス制度 財務省申し入れ 記者会見 2022年8月8日」。


この記者会見については別の切り口で重大な問題点を指摘したい。会見の開催案内は報道各社にも送られたが、大手メディア(テレビ局、読売・朝日・毎日・日経等の全国紙、東京・北海道・西日本等のブロック紙)からの参加は0社という衝撃的な結果だった。

会場の衆議院第二議員会館は国会記者会館(大手メディア各社の記者が常駐)から徒歩3分という超至近距離にもかかわらずだ。結局、参加したのは機関紙・雑誌・専門紙・フリー等の記者のみで、筆者を含めても5名程度。

ちなみに、6月9日に「インボイス制度の中止を求める税理士の会」が同会場で行った記者会見の際も大手メディアの現地参加は同様に0社だった。

これらの事実が示す通り、残念ながらインボイスについては大手メディアの公正な報道は全く期待できない。来年10月の導入直前になって、アリバイづくりを目的に申し訳程度に報じるのが関の山だろう。

その理由としては、「新聞は軽減税率の適用対象のため消費税に関する問題を指摘しづらい」「大企業の会社員である自分は被害を受けないと記者自身が思い込んでいる」等の背景があると推測される。

だが、一人一人にできることはまだ残されている。例えば最もハードルの低い方法として、インボイス反対のオンライン書名に参加することが挙げられる。

*change.orgの署名数は8万筆以上(2022年9月3日現在)

また、大手メディアには半ば見切りをつけて、自らインボイス制度の問題点について声をあげる団体が次々に現れている。昨年から充実した情報発信を続けている「STOP!インボイス」を筆頭に、今回の会見を主催した「公平な税制を求める市民連絡会」、名前の通り税理士による「インボイス制度の中止を求める税理士の会」 、声優が立ち上げた「VOICTION」などなど。今後もこれらの団体は様々な情報発信に加えて、陳情、院内集会、デモなどのアクションを予定しており、本記事でインボイスについて問題意識を持った方にはぜひ注視して頂きたい。


文/犬飼淳

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