書籍もひとつの「芸」として、生き様をエンタメに昇華して届けたい

では、書籍化する「売れてない芸人」はどのように発掘するのだろうか。自身を「お笑いは普通にテレビで見るレベル」と語る廣田氏は、地道に金の卵シリーズを繋いでいる。

「プロジェクト立上げ当初は、Twitterやnoteを見て、文章が面白いと感じた方に直接DMなどからお声がけしていました。その後だんだんと芸人さんの中でも認知が広まり、マネージャーの方から売り込みをいただいたくことも。ちなみにウエストランドの河本さんは、ご本人から執筆したいと言っていただき、『朽木糞牆(キュウボクフンショウ)』の書籍化が実現しました」

“売れてない”芸人の自伝本「金の卵シリーズ」はなぜ、売れるのか?_3

持ち込みで企画が進む場合、芸人として「売れてない」か判断が難しい場合もありそうだ。代官山ブックスが考える「売れてない」とは何を指すのかも聞いた。

「正直、明確な基準は定めていません。ご自身が“売れてない”と思っているならば“売れてない芸人”ということにしています。例えば、よく地上波でお見掛けする芸人さんでも、ダウンタウンさんを目指す上でまだ、発展途上だと感じているのであれば、まだ“売れてない”=金の卵ということになりますよね」

金の卵シリーズでは、文体なども含め原稿のルールは存在しない。基本的に本人に任せて自由に執筆してもらっているという。

「芸人さんには、書籍での表現も一つの“芸”と捉え、自身の生き様をしっかりとエンタメとして昇華してほしいと思っています。例えば、ドキュメンタリー番組のように辛かったことや大変だったことを第三者が淡々とまとめてしまうと、受け手側としては重く感じてしまうこともあります。だからこそ、金の卵シリーズでは、文章が上手い・下手よりも、しっかりと読者の心を震わせてくれる、本人にしか出せない言葉を大切にしています」