誰しも「売れてない」時期があるからこそ、売れてない芸人の生き様が共感を生む

そして、売れない芸人にスポットを当てたきっかけは、友人の大学時代の後輩である高校ズ・秋月氏の生き様に感動したことだと振り返る。

“売れてない”芸人の自伝本「金の卵シリーズ」はなぜ、売れるのか?_2

「秋月君には、シリーズ1冊目の『売れてない芸人が書いた17の話』を書いてもらいました。彼は大学を中退してNSCに入学しているのですが、そのNSCでの卒業公演がめちゃくちゃ面白くてカッコ良かったんです。

それでも売れるのは簡単ではない世界。思うようにいかない中でも多くの経験を積んだことで秋月君の生き様が醸成され、かつての華やかさ以上の魅力が生まれたと僕は思います。その生き様の魅力を世の中に広めたいと、執筆のオファーをしたのが、金の卵シリーズの始まりです」

1冊目が完成した後、廣田氏は様々な芸人の中に存在する一人ひとりの生き様もクローズアップしたいと感じ、事務所横断型の売れない芸人の自伝本「金の卵シリーズ」が誕生した。

「正直なところ、売れてない芸人さんの本1冊だけで注目を集めるのは難しいところがあります。でも、皆で集まれば、それぞれの個性が輝く大きな一つの形になり、そうなれば売れている芸人さんの本にも勝てるかもしれないと思い、シリーズ化に至りました」

どんな仕事をしていても「売れてない」時期が必ずあるからこそ、売れてない芸人の生き様を世の中に届けることに意味があると続ける。

「僕はいまだに“売れてない”出版社の社長ですが、これまでの人生もずっと売れてなかったなと思います。新卒で入社した会社を10ヵ月で辞めたり、転職先の広告会社では営業成績が一番悪かったり。テレアポやバーテンダーのバイトで食いつなぐ日々もありました。迷走しながら“本を作りたい”という夢に向かってもがいているんです。

だからこそ、芸人さんが“売れてない”等身大の姿をさらけだしてくれることで、“こんなにも魅力的で幸せなのだ”と勇気をもらえているんです。まだ夢に向かっている途中をリアルタイムで世の中に伝えることで、“売れてない”“まだ夢の途中”の人たちが前向きに頑張れるようになるのではないかと思います」