「選手と同じように、監督も…」
サッカーの世界は非情だ。
ライカールトも右腕だったコーチを失うと、時の流れに勝てなかった。チームは爛熟期を迎えて退行。監督がチームや自身をアップデートさせ、選手の良さを引き出すのは至難の業だ。
片野坂監督は、大分での成功をガンバで再現できなかった。
それは必然だったかもしれない。同じ戦いは劣化するだけだ。
例えばガンバの選手は大分の選手よりも、ポテンシャルは高いが、統率する難しさもある。日本代表歴やJ1経験も豊富なだけに、我が強い。また、大阪の選手は性格的にやんちゃで、アグレッシブなトライを好む。組織にはめ込まれることに拒絶反応もあったかもしれない。J3からともに勝ち上がってきた大分とはあまりに違う状況だった。
しかし、片野坂監督の見せ場はこれからだ。
「選手と同じように、監督も日々、サッカーを生きている」
スペイン人監督ファン・マヌエル・リージョの言葉は、名将の条件の答えになるかもしれない。2019年、リージョはヴィッセル神戸をわずか7か月で失意の中で去った後、中国2部のクラブを1部に引き上げ、翌年からマンチェスター・シティのヘッドコーチとしてプレミアリーグ優勝に貢献していた。今シーズンからはカタールのアル・サッドで指揮を執る。
失敗も成功も乗り越えていくのが、名将への道だ。
取材・文/小宮良之 写真/西村尚己・アフロスポーツ