プライバシーのボーダーラインが居心地のいい生活

──ロンドンに5年住み、代理母出産(*)で息子くんを授かったことをきっかけにリカさんの故郷スウェーデンに移住されて6年が経ちました。海外での生活はいかがですか?
(*代理母出産とは、妊娠・出産を第三者に依頼する生殖医療。サロガシーとも呼ばれる。現在は卵子提供者と代理母が別であるジェステイショナル・サロガシーが主流。みっつんさんの代理母出産の経緯、経験などは書籍『ふたりぱぱ:ゲイカップル、代理母出産(サロガシー)の旅に出る』で読んでいただけます)

同性パートナーとの結婚、代理母出産…「ふたりぱぱ」の子育て事情_2
YouTube『ふたりぱぱ FutariPapa』より

自分がゲイであることを忘れてしまうくらい、楽に生活しています。僕は「ゲイ」という自分のアイデンティティがすごく好きだし、同じセクシュアリティの友だちに会って話している時間もとても楽しくて、ゲイに生まれて良かったと思っています。毎日の生活の中でセクシュアリティを意識しなくていい、というのはすごく居心地がいいですね。

やっぱり日本にいたときは、ふとしたタイミングで自分のマイノリティを突きつけられるんです。たとえば「彼女いるの?」って簡単に聞かれる。隠していたときは、彼氏の話をわざわざ女性に置き換えて話していました。そうした小さな積み重ねが負担になって、少しずつ心をむしばんでいっていたのだと思います。今は全くそういうことがないので、別の人生を生きている感覚です。

──特別視されないということだと思うのですが、日本とはどういう違いがあるのでしょうか。

セクシュアリティに限らず、ロンドンやスウェーデンに暮らす人々の「プライバシーのボーダーライン」が日本人とは違うと感じます。特にスウェーデンの場合は、ボーダーラインが厳しい。初対面で年齢やパートナーの有無を聞くことはないですし、基本的に相手が言うまで聞かない、というスタンスです。

ただ「どうしてスウェーデンにきたの?」と聞かれるのですが、パートナーがここ出身で子どもが生まれたから来たことを伝えると、やっぱりスウェーデンの人でも僕の相手は女性だと思うわけです。

――そういった場合にはどうお話するのですか?

向こうは代名詞で男性性・女性性(HeやSheに値する言葉) を使うので、性別をはっきりさせる必要がある。会話の中で、パートナーを男性性で表現すると、直接的にゲイと伝えなくても理解してもらえるんですよね。相手が「奥さんは〜」と聞いてきたら「夫なんだけどね!」と言えば、「そっか、ごめんね」で次の会話に進んでしまう。ジェンダーに関してベーシックな知識を持っていますからね。

会話の中でサラッと事が済んでしまうので、普通って言葉は嫌いなんですけど、いわゆる“普通”になれる感じがあります。余計な労力を使わなくていいから気楽。それはプライバシーに踏み込み過ぎないという文化や、マイノリティに対する知識があることから生きやすくなるのではないかと思います。