人間をありのまま描く

新型コロナの蔓延下、お笑い米軍基地も翻弄され続けた。2020年は無観客ライブを行い、2021年は再三にわたる延期を乗り越えなんとか実施にこぎつけたものの、その間、精神的には深いダメージを負った。

「仕事がなくなって、僕も収入が5分の1ぐらいに落ちた。生活するだけでも大変になって、やめていった仲間たちもいる。そんな中で、この2年ぐらい、俺たちは世の中に必要とされてないんじゃないかと思い始めて。命をかけてとまで言ったら大げさかもしれないけど、生活のすべてをつぎ込んでやってきたことが何の役にも立ってないというのはこたえましたね。正直、芸人を辞めようと思ったぐらいで」

だが、そういうときだからこそ、芸人の本能が疼いた。

「葬式の時にちょっと笑いを取りたくなるのと似てるのかな。単純に、今の空気感が嫌だからガス抜きをしたいみたいな。僕は今の政治的なもの、コロナを取り巻く状況が、めちゃくちゃ嫌だった。だからこそ、今、やるんだ、と。

チャップリンがやっていたこともそうですよね。『独裁者』なんて、いろんな国からドイツを刺激するなと批判されながらも作った。喜劇人として、そういう空気感自体、許せなかったんだと思います」

小波津は、沖縄そのもののように映る。普段は、陽気で、親切で。だが、心の襞を一枚めくるとそこかしこに怒りのマグマが溜まっている。しかし、だからこそ、コントを作り続けてきたのだ。

「沖縄で起きてることって、そもそもコメディなんですよ。でも、世界中で起きていることのほとんどがそうなのかもしれない。みんな人間がやってることなんで。僕は特別なことをやってるわけではなくて、沖縄の人の日常を描いてるだけなんです」

人間をありのまま描く――。それこそ最上の喜劇である。

取材・文/中村計

小波津も小さい頃は米軍基地に憧れて育った。「米兵がきれいな芝生の上でサッカーをやっていてね。沖縄は赤土なんで、僕らはすぐに擦りむくんですよ。『あそこでサッカーさせろよ』というのが米軍基地への最初のツッコミでしたね」
小波津も小さい頃は米軍基地に憧れて育った。「米兵がきれいな芝生の上でサッカーをやっていてね。沖縄は赤土なんで、僕らはすぐに擦りむくんですよ。『あそこでサッカーさせろよ』というのが米軍基地への最初のツッコミでしたね」
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前編 「基地を笑え! 戦争を笑え! 沖縄「お笑い米軍基地」タブーへの挑戦」はこちら

本土復帰50 周年記念
お笑い米軍基地 なはーと編
制作総指揮・企画・脚本・演出 小波津 正光(まーちゃん)
2022年 8月13 日(土) 17:00 開場 18:00 開演
【会場 】 那覇 文化芸術劇場 なはーと 大劇場
【入場券】前売 2,000 円 当日 3,000 円
【取り扱い】イープラス、 ファミリーマート各店( Famiポート)
デパートリウボウ4階チケットカウンター
【主催】 お笑い米軍基地実行委員会 【共催】 那覇市
【お問い合わせ】
お笑い米軍基地実行委員会
TEL 098-869-9505 (平日 10:00 19:00)
WEB https://www.kohatsumasamitsu.com/