小手調べからのギアチェンジ

パリは、前半15分までガンバの実力を推し量るような戦いをしている。慎重になったわけではない。肌を合わせる中、どこまでの強度があり、どれだけのプレーレンジで、どこに綻びがあるのか。腰を据えて受け止め、ジャッジを下した。

これは欧州・南米における戦いの常道である。

少し脱線するが、ジョゼ・モウリーニョやディエゴ・シメオネなどの名将は、この“正攻法”を逆手にとって、最初の15分で一気に勝負を決める戦術を駆使している。相手の虚を突いて、対応する隙を与えない。それだけのインテンシティで攻め切って、試合を決めてしまうのだ。

話を戻そう。一つの潮目は、左のウイングバックであるヌーノ・メンデスが対面する小野瀬康介へのリアクションにあった。

序盤、メンデスは小野瀬のボールテクニックで後手に回っているように見え、間合いを警戒していた。しかし17分だった。ボールを受けた小野瀬を馬力で凌駕し、ボールを奪い返すと、豪快にカウンターを発動した。相手の実力・間合いを「恐れることはない」と見切り、攻勢に出たのだ。

これを合図に、チーム全体でもパリはガンバを攻め立てた。ハイラインを敷いたガンバの裏を悉く破った。じわじわと、各所で地力の差を見せつけた。

ガンバ陣営は、その重圧に晒されていたのだろう。ディフェンスの三浦弦太はあろうことか、目の前に来たメッシに慌ててぶつけてしまった。ネイマールにこぼれ球を拾われ、再びメッシが受けてシュートを打ち、そのこぼれをパブロ・サラビアに蹴り込まれた。

ガンバの戦いは高いラインを保ち、勇敢ではあったかもしれない。しかし力の差を考えたら、蛮勇に等しかった。手の内を見せないようないやらしさがなく、勝負の駆け引きで純朴過ぎた。

しかし2-0にされても、ガンバの選手たちは矛を収めなかった。点差がついて、パリにゆるみが出たのもあったか。右サイド、小野瀬が鮮やかにヌーノ・メンデスの裏を破った。そこからのクロスのこぼれを黒川圭介が押し込み、1点差とした。

前半の数十分間だけで、日本サッカーの無垢で反骨キャラクターが濃厚に出ていた――。