本来の意味での「マリーシア」

過去、日本代表は窮地に追い込まれた時、最大の力を示している。

2010年の南アフリカワールドカップ、2018年のロシアワールドカップは典型的だろう。下馬評は最悪だった。しかし却って選手が奮起し、ベスト16まで勝ち進んだ。

「前評判が悪い方が活躍する」

それはワールドカップだけでなく、どの大会でも恒例と言える。7月のE―1選手権では、弱小・中国とのスコアレスドローで瀬戸際に立たされた。ただ、これでチームは一つに束ねられたところがあった。背水の陣、あるいは反骨心というのか。もともと東アジアでの実力は劣っていないだけに、「二度と失態は見せられない」と士気が高くなり、韓国を鎧袖一触で3-0と撃破し、見事に優勝を飾った。

しかし勝負の駆け引きという点では、改めて無垢な一面をさらけ出した。窮地に立たされてから反発する、もしくは相手に一撃を食らってから目覚めるというのか。先んじて勝つ、相手を引き回して勝つ、その老獪さがない。

反転攻勢に転じられる力はあるが、本来の意味での「マリーシア」がないのだ。

マリーシアとはサッカー界では「ずる賢さ」のように説明され、時間稼ぎのためにボールを角でキープすることや審判に分からないようにファウルする「狡さ」に集約されているが、「90分間を通した駆け引き全般」を指している。11人対11人で戦えば、必ず強い箇所、弱い箇所が出る。そこで弱点を看破し、どのように局面で有利に戦い、効率よく勝利できるか――。

試合の流れをつかみ、たとえ自軍の状況が悪くても、それ以上に悪くしない、抜け目のなさが求められる。