株式分割とは、投資の民主化
そもそも株式分割の狙いは、価格が下がることで投資家が購入しやすくなることにある。投資資金が少ない層にも裾野を広がり、「これまで高くて手が出せない……」と思っていた人が、優良企業の株価が「お手頃価格」になることで投資するようになる。これにより、株式を購入する人が増えるのだ。
すると、何が起きるだろうか? 人気が高まったり、たくさんの人が購入することで株価は上昇する傾向がある。オークションと同じで、人気が高いものは価格が上がる。みんなが欲しいものには価値があり、その原理は株式市場にも当てはまる。
つまり、株式分割は「株価が上がるシグナル」になりうるのだ。
株式分割前から保有している投資家にとっては、株価上昇の恩恵が得られるため、株式分割は「株主還元」の一環だとも言われている。企業から既存投資家に対してのメッセージは「これまで、保有してくれてありがとう。これからもよろしくね!」といったところか。
そして、これから投資家になりたい人に対してもこんなメッセージが込められている。
「株価を買いやすい値段まで下げたので、ぜひ当社に投資してください。そして、この先も企業の成長を投資家として共に見守って欲しいです」
このメッセージには、今後の企業成長に対する自信も含まれている。
株式分割は、分割する割合やそれによって変化する株価に着目すると、理論的な価値は変わらない。
しかし、現実の株式市場は理論通りにならない。これは実態経済も金融市場も同様であり、だからこそ経済は面白いのだ。
任天堂の株式分割まであと2ヶ月半。投資を検討する時間は、まだ残されている。そして株式分割のカラクリを知ることで、これからも有益な情報をキャッチしていただきたい。
文/馬渕磨理子