大ヒットアイテムの開発を支えた2つのカギ

今回、取材に応じてくれた若井麻衣さんがPRを担当するKATEでは、商品開発をする上で「市場ニーズに合うもの」と「情緒性」を掛け合わせるように意識していると教えてくれた。

そこで頭をよぎるのが、コロナ禍の時代に誕生したリップモンスターだ。

コロナ禍により、外出が制限され、マスクをすることが当たり前となったこの2年あまり、化粧品業界全体の売り上げが大きく落ち込んでいる。マスクで隠れる、見せる機会が大幅に減ったリップ市場は特にそうだ。

しかし、そんな社会情勢が続く2021年5月に「ケイト リップモンスター」は登場した。

女性の社会進出、コロナ禍のメイク欲……爆売れのリップモンスターから紐解く落ちない口紅の背景_4

時代に逆らうようなタイミングで出したリップモンスターについて、社内外からは「なぜ今、リップなのか」という声もあったそうだ。しかし、この当時の心境を若井さんは次のように教えてくれた。

「たしかに、マスクでリップメイクが隠れてしまうタイミングで、リップアイテムの需要があるのかと疑問視する声があるのも納得でした。

しかし、SNSで女性の声を拾っていくと“マスクをしていたって、メイクしたい”という声があることに気づいたんです。そのニーズをしっかりキャッチできたところが、すごく大きかったなと思っています」(若井さん)

この大きな決断は、長きに渡り「市場ニーズに合うものを的確に捉えて出す」ということを繰り返してきたからこそできたこと。そこにKATEの商品のもう1つのカギ「情緒性」を掛け合わせた。

「ただ落ちない口紅を作ったところで、その技術は既にありますし、それだけでは受け入れられないだろうと思っていました。

そのため、今回は落ちないという技術だけではなく、メイクをするときのワクワク感と楽しみ感を入れようと決めたんです。

その結果、以前から意識していた情緒性のある、かつSNSでつぶやきたくなるようなネーミングを考えました。

KATE史上最強に落ちない口紅であるため“最強”なイメージが強い「モンスター」と「リップ」を組みわさせたリップモンスターと名付けたのです」

さらに、ネーミングへの情緒的こだわりは、それぞれのカラーにまで。

例えば、01のカラーは「派手な赤は嫌だ。でも子どもっぽく見えるピンクも嫌だ」「私は絶妙な赤ピンクの口紅が欲しいんだ!」という“モンスター”の欲望に応えたいとの思いを込めて“欲望の塊”と表現している。(全色に込められた思いは最終ページへ)

女性の社会進出、コロナ禍のメイク欲……爆売れのリップモンスターから紐解く落ちない口紅の背景_5
01 欲望の塊