劇中のSF的設定が現実に近づいてきている
この映画は、1992年にアメリカで放送開始されたリアリティ番組『リアル・ワールド』をはじめとした、90年代に世界各国を席巻したリアリティショー・ブームをシニカルにとらえて作られている。30年以上経った現在もなお、若者世代の間では恋愛リアリティ番組が人気を博しているし、一般人がSNS上に日常を切り貼りしていたりする。実は『トゥルーマン・ショー』は、今の時代にあってこそより深く共感できるテーマなのかもしれない。
トゥルーマンの暮らす島「シーヘブン」の人々はトゥルーマンを除いてみんなが俳優。生活にまつわるものがさりげなく(ときに大袈裟に)宣伝されており、番組の通販サイトから買うことができるという設定。これもまた、SNSを使った広告などを数多く目にする現代社会を、見透かしているような感覚になる。
実際に『トゥルーマン・ショー』よろしく、番組の中に広告を馴染ませるプロダクトプレイスメントや、アドフュージョンと呼ばれる広告手法は、映画やドラマの中で多く取り入れられているし、6月から配信されているドラマ『30禁 それは30歳未満お断りの恋。』(FOD)では、劇中のシーンに企業のポスターなどを合成するサービスが始動している。
作品の中で描かれているSF的な世界が、どこまで現実に近づいているのか確認作業ができるのも、クラシック映画ならではの楽しみ方。
みなさんも過去作から現代に繋がる「答え合わせ」をしてみては?
『トゥルーマン・ショー』(1998)The Truman Show 上映時間1時間43分/アメリカ
トゥルーマン(ジム・キャリー)は、保険会社の平凡なセールスマン。ある日、空からライトが落ちてきたのをきっかけに、自分を取り巻く世界の異常さに気づき始める。実はトゥルーマンが住む街は巨大なセットで、周囲の人間たちはすべて俳優。生まれたときから彼の人生はテレビ番組「トゥルーマン・ショー」として放送されていた。名匠ピーター・ウィアー監督が、現代社会へ警鐘を鳴らしながら、人間性について描き出したヒューマン・コメディ。